音楽好きなら、行きたかったライブに行けなくて悔しい思いをした経験が一度くらいはあるのではないだろうか。
“ラストライブ”は、蓮月(Vo・G)がひとりの音楽好きとして、大好きなバンドの解散ライブに行けなかったときに書いた曲だという。
そして実は、ライブでは既に何度か演奏されていて、ついにこのタイミングで音源化に至った曲でもある。
哀愁漂うギターストロークからしみじみと喪失感を歌い出したかと思えば、2番では突然パンクロックに乗せて感情が走り出す。悲しいような悔しいような複雑な感情を拾い上げるため、オルタナティブロックに大きな影響を受けたブランデー戦記らしい表現力が光っている。
蓮月は、憧れの人への想いや、この曲のように行きたいライブに行けなかったといった、誰しもが共感できる気持ちを種に歌詞を紡ぐが、その表現はとても文学的。《見えない敵なら/毎晩やって来てはそっと目をつついて/光を餌にして食べる》。心の支柱となる音楽を失い、自分の中の光がついばまれていくことへの危機感だろうか。解釈の幅を持たせた余白のある歌詞だけど、そうすることでむしろ邪念のない純粋な音楽への愛を感じることができる。
そんなブランデー戦記の原点と言えるような楽曲とは対照的に、MVでは、秋葉原の街をドリーミーな世界観に塗り替えていく、最新のブランデー戦記の姿を見ることができるのでこちらも要チェックだ。(有本早季)
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ついに音源化されたブランデー戦記“ラストライブ”に改めて気づかされる唯一無二の表現力
2025.02.27 17:00