serial TV dramaラストパーティー


彼らは最後までロックヒーローだった。

小松も書いていますが、serial TV dramaの解散ライヴ。
約3時間という長兆場だったにも関わらず、疲労感よりも、夢の中にいたような心地よさと爽快感に満たされた。

1曲目の“狼”のイントロが鳴った瞬間、遂に「終わり」へのカウントダウンが目の前ではじまってしまった現実に、一気に会場全体が異様な緊張感に包まれた。メンバーもどことなく緊張している。
でもそれはほんとに一瞬のことだった。それからは、バンドも客席も出し惜しみ一切なし! 現体制での楽曲もインディー時代の楽曲も乱れ打ち、シリアルワールドが炸裂!
でもやっぱり、ステージを観ていると、いつもよりメンバーそれぞれの胸の中に去来する感情の揺れが無防備なくらい剥き出しで、いつにも増してバンドの体温や血流がダイレクトに伝わってきて生々しい。そんな、ハッピーとリアルな感情との交錯が、バンドも客席も今この瞬間を全力で楽しむことに拍車をかけていた。
“ユニコーンの角”で本編を終え、アンコールでは“ginger”“まえぶれ”“まばゆい”と、バンドにとって大きな意味を持つ超名曲を連投。さすがにこれはエモすぎた。あと少しで終わってしまうということを改めて自覚せざるを得ない流れに、ステージ上の5人も全身全霊だし、客席も一音たりとも聴きこぼすまいと必死にステージに喰らいつく。
ダブルアンコールを前にしたMCではメンバー全員がひとこと。それぞれがそれぞれらしい話をし、最後を締めたリーダー新井弘毅(G)は涙で言葉が出てこなかった。
そしてラストは“PARTY ROCK ANTHEM”。どれだけ湿っぽくなっても、やっぱり彼らはパーティーという言葉が似合う。

この上ない多幸感に包まれて華やかに幕をおろしたシリアルの8年間。
シリアルのライヴを観るたびに、私は彼らのロックを媒介にして夢を見ていたような気がする。5人の音を前にすると、ただひたすらロックを純粋に信じさせてくれたし、無邪気になれた。
そんなライヴができるのも、笑っちゃうくらいマニアックな曲構成や変態的なギター早弾きを容易く極上のポップネスへ持ち上げてしまえるのも、今の日本のロックシーンには彼らしかいない。
そんな唯一無二の存在の彼らが見られなくなるのは残念だが、彼らの音楽は生き続ける。

ステージを去る間際、
「調子いいぜーーーーっ!! またね!」
といった新井の言葉が耳に残っている。

serial TV drama、ありがとう。そして終演直後のラストショット。(中村)
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