深い幸福感に包まれた素晴らしいライヴだった。『In Focus?』を引っ提げてのツアー、セミファイナル東京公演。オープニング“Circle”〜“Katachi”と、のっけから『In Focus?』の世界がカラフルに飛び出す。ステージの床に描かれた羅針盤の上に裸足で立つトクマルシューゴは、音楽という魔法にのって、世界中どこへでも、いや失われた過去でもまだ見ぬ未来でも、どこにでも行けるように見えた。
このアルバムについて、「色んな国の人を連れてきて勝手に音楽を演奏させた感じ」と本人は語っていて、価値観の違う生き物同士が喧嘩しながらも調和する状態を音楽で表現していたが、ライヴでは「混沌」というよりむしろ、ポップな歌としてリスナーを包み込んでいたように思う。
特にアンコール、弾き語りから始まり、最後にバンドへと広がっていく“Tightrope”はトクマルシューゴの核ともいうべき素晴らしい楽曲だった。もう出会うことができない風景や色や匂い、トクマルシューゴの音楽を聴いていると、そうした失われたものたちを生々しく、生き生きと感じることができる。それはノスタルジアではなく、普遍的な音楽の力があるからだ。宇宙船の中で音楽を作ってみたい、と以前インタヴューで言っていたが、そんな俯瞰した視点からフォーカスされた緻密で解放的なポップはやはりとんでもないと改めて思った。
16日(日)の沖縄でこのツアーは終わる。沖縄の方、ぜひ今のトクマルシューゴ見たほがいいですよ。
ちなみに先月号(12月号)のJAPANにもロングインタヴュー載ってます。
今日も演奏された“Decorate”。(井上)