サザン、22 年ぶりの武道館ーー日本の夏はこうして締め括られた

サザン、22 年ぶりの武道館ーー日本の夏はこうして締め括られた
サザンオールスターズ、「おいしい葡萄の旅」ツアー、追加公演2日目。
つまり、ツアーファイナル。
22年ぶりの日本武道館。

日本のポップソングのスタンダードであり続けてきたサザンにだけ許されていることがあるとすれば、それはそのスタンダードを塗り替えることだーー。
今日の約4時間、そんなことをずっと考えていた。

真夏の恋の切なさはより深くなり、ギラついた太陽の陽光は暮れていく瞬間の寂寞を匂わせている。
様々な季節、特に夏という季節にたくさんの思い出と眩しさを刻みつけてきたスタンダードセッターとしてのサザンは今、夏に新たな表情を加えようとしている。
それは暮れ行く夏、晩夏だ。

盆を過ぎ、暑さもやわらぐちょうど今のような季節の日本と、その風景のことだ。
『葡萄』という傑作をして、これこそが最新のサザンの凄さなのだと思わされるのは、サザンがこれまで何度も描いてきた夏の景色に新しい色合いが加わっているからなのではないか。
実際、今日も『葡萄』の楽曲はひときわ繊細な濃淡を持った曲としてライヴ全体の大切な文学性をになっていた。
すごい、と端的に思った。
極上のポップソングを通して、そしてこの巨大なエンターテインメントを通して、こんなに豊かなグラデーションを持ったセンチメントを味わう経験はこれまでになかったからだ。

こんなことがやれるのは言うまでもなく、サザンオールスターズ、ただひと組だけだろう。
サザンは新たな傑作『葡萄』と、今回の「おいしい葡萄の旅」ツアーでまた、誰もなし得ていないポップソングのスタンダードを塗り替えてみせたのだと思う。

本当に幸せなツアーだった。
最高だった。
今日を楽しみにここ数ヶ月過ごしてきたところがあったので、今はなんとなく足腰に力が入らない感じがする。

レポートはじっくり書きます。
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