田邊の書く曲はそもそも素晴らしいが、田邊の書くAメロは特別に素晴らしい。
つまり、曲との出会いの瞬間がーーというか、自分の声と誰かの感覚が出会う瞬間こそが、何かがバチっと伝わる瞬間なのだと田邊は知っているのだと思う。
アルバム『VECTOR』はそういうブルエンの温度や考え方が様々なメッセージとなった作品だった。
そのアルバムをひっさげたツアーだから、ブルエンのライブはやはりたくさんのベクトルを持ったライブになっていた。
だが、言っていること、言おうとしていることがどんどんたったひとつになっていくのがとてもブルエンらしかった。
歌えば歌うほど、曲を書けば書くほど、ひとつのことを言っている。
きっと田邊は『VECTOR』の、豊かな音楽を作り上げていく中でそう気づいたんだろう。
ブルエンのメロディは出会いの瞬間に、そのひとつの思いが伝わってくる。
無粋に説明してしまうなら、それは、少しだけでもいい、愛してほしいんだ、ということだ。
『VECTOR』ツアーは過去最高に潔く、そして切実だ。
大切なツアーを彼らは今、過ごしている。
夏のロック・イン・ジャパン最終日、8月12日、LAKE STAGEの大トリ。
4人はどんな景色を見せてくれるのか。今から楽しみにしている。