キリンジ、兄弟での最終公演、そのトレイラーが公開&”Drifter”について

キリンジ、兄弟での最終公演、そのトレイラーが公開&”Drifter”について

キリンジ、堀込泰行在籍時の最終公演@NHKホールの映像作品、そのトレイラーが公開。
キリンジは兄弟のユニットだったが、「兄弟だからこその」なんて言われるパーフェクトなハーモニーを前面に出すでも(コーラスは間違いなく上手だったけれど)、絆を過剰にアピールするでもなく、お互いにリスペクトできる職人同士として、あくまでも最良のパートナーとしてフラットに音楽に向き合っているところがよかった。
ふたりが出自とするジャンル特有のことかもしれないが、キリンジのポップスは、どこかカラッと乾いていた。
その特性は、特にバラードにおいて顕著だったように思う。
湿っぽくならず、土着的なワビサビの感性に依存せず、作り手の生理で歌い上げるでもなく、ピュアにグッドメロディを作り、ポップスとしての完成度をストイックに追求していた。
また、散文的でポエティックな詞の世界観がその印象を強めてもいた。
その意味で、自分が特に感動したのは、”Drifter”の詞だった。

この街の空の下 あなたがいるかぎり
僕はきっとシラフな奴でいたいのだ
子供の泣く声が踊り場に響く夜
冷蔵庫のドアを開いて
ボトルの水飲んで 誓いをたてるよ
欲望が渦を巻く海原さえ
ムーン・リヴァーを渡るようなステップで
踏み越えて行こう あなたと

今こうして書いてみても、なんて素晴らしい歌詞なんだろうと思う。
当時、「誓いというのはシラフで真夜中にボトルの水を飲んでたてるもの」というイメージはものすごく新しく感じた。
それは今でこそ、「健全さ」や「ヘルシーさ」なんていう惹句で語られるイメージだが、当時は鋭い批評として、それこそ「酒飲んで、くだ巻いてる時代じゃ、もうないんだよ」と言われたような気がしたものだ。

だからなんだ、という話だが、未来永劫色あせないポップスというのはまさにキリンジのような音楽を言うのだと思う。
特に今こそ歌詞を読みながらじっくりと聴くと、その普遍性というものが如実に伝わってくる。

というわけで、”Drifter”を貼っておきます。
”Drifter”
作詞:堀込高樹 作曲:堀込高樹 編曲:冨田恵一/キリンジ
小栁大輔の「にこにこちゅーんず」の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする