いきものがかり@横浜アリーナを観て思ったこと
2013.09.12 14:34
大きな会場でのライヴだったが、パフォーマンスとしてはとてもシンプルだ。
歌い、MCでゆっくりと話し、オーディエンスたちとみんなで笑い、みんなでひとつになっていく。
言ってしまえば、それだけのライヴである。
しかし、それが心の底から楽しいというのが、いきものがかりのポップスの魔法だ。
吉岡聖恵を観ているだけで楽しい。本当に幸せな気持ちになれる。
彼女が飛び跳ね、表情豊かに歌い、楽しそうに笑い、メンバーのMCに笑い、またじっくりと感情をこめて歌うその姿を観ていることがなにより幸福な気持ちにさせてくれる。
その圧倒的な存在感とくるくると変わる表情、キュートで大ぶりな一挙手一投足で、1万人以上のオーディエンスを一体感で満たしていく。
ひとりのヴォーカリストがやれることの、もっとも「生身」のコミュニケーションを見せられた気がした。
青臭い言い方になるが、彼女は本当に全身で歌を歌っているようなのだ。
そうして見事に一体化したオーディエンスといきものがかりは、吉岡が出すさらなるサインによってより深く、より親密な関係を築き上げていく。
息を吸い込むブレス音、そして、メロディを口にする直前、肩を上ずらせて息を吸い込む仕草。
吉岡聖恵の場合、そんな、ヴォーカリストがもっとも頻繁に繰り返す行動がひとつひとつが、ファンと彼女にとって大切なサインになっていく。
そうやって、どこまでも幸福で密な、理想的な関係性が出来上がっていく。
象徴的なのは歌詞もそうだ。
いきものがかりは、「君は君だ」とは言わない。「君はここにいるんだ」とも言わない。
基本的な温度として、「僕らは僕らだ。僕らはここにいるんだ」と歌う。
それは歌詞を作る上での正直な思いでもあるのだろうが、なぜ彼らが「僕ら」という言葉を使うのか、もっと言うと、使わなくてはならないのか、ライヴを観ればよくわかる。
誰より「僕ら」という概念を体現している、本当に素晴らしいライヴだった。