あの夜、伝説のライブを観た

あの夜、伝説のライブを観た

10月1日売のロッキング・オンで、伝説のライブという特集。
ライターのひとりとして、とりあえず5本、今まで観てきた中で選べということで、
選んではみたものの、5本が5本とも、90年代のものになった。
今世紀ものがないことにあとで気づいたんだけど、
まあ伝説、ということなのだから、
多少時間を経たものくらいがちょうどいいのではと勝手に納得する。

とはいえ、その90年代ものの中でも、泣く泣く外したものもあって、
そのひとつが、パール・ジャムの初来日。
仙台から東京・武道館、そして大阪と、思い返してみると、
来日時の全ツアーに帯同したのはこのときのパール・ジャムと、
現時点で最後の来日となっている2002年のサマーソニックのモリッシーだけだ
(つまり、同じラインナップのフェスに2日連続で行ったということになります)。

このときのパール・ジャムはちょうど『ヴァイタロジー』のときで、
つまりは、カート・コバーン・ショックの直後、
それでなくともピリピリしていたバンドの緊張感が極限に達していたときだった。
その渦中でのライブは、もうとんでもなかった。
なんというか、言い方が誤解を招くかもしれないけど、
観客なんてどうでもいいようなライブだったのだ。
とにかく、ひたすらに演奏に集中し、その中で生まれてくる熱量にまた高まり、
さらにその先へとぐんぐん進んでいく感じ。
要は、あの過酷に強迫神経症的な状況にあって、自分が本当に納得できるものを
まさにロックの中に探し当てるまで続けられる求道のようなものだった。
それは、エディ・ヴェダーが見つけるまでは終わらない。
エディが燃え尽きるまで終わらない。
好きになったロックを鳴らしてみたら、ろくでもない騒動に巻き込まれた。
それでも、ロックを自分は信じられるか、
いや、ロックは自分をそれでも正しく信じさせてくれるかということを、
毎晩繰り返していたように思えた。
来日最後の夜、大阪厚生年金にいたひとなら、わかってくれるんじゃないだろうか。
みんな、呆然としていたもの。

そういうことを思い起こしながら聴く最新シングルはまた、泣かせてくれる。
あれからもう15年くらいは経ったのか。
このうえなくドライヴするロックの中で
エディがイエー!イエー!イエー!って歌っている。
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