エディ・ヴェダーのツアーが超豪華。レッチリのチャドと、ジョシュも参加で、ザ・ビートルズからプリンスまでカバー。モトリー・クルーのディスまで。

エディ・ヴェダーのツアーが超豪華。レッチリのチャドと、ジョシュも参加で、ザ・ビートルズからプリンスまでカバー。モトリー・クルーのディスまで。 - pic by Sachyn Mitalpic by Sachyn Mital

エディ・ヴェダーが、これまでなかったような突き抜けたようなソロ作『アースリング』を発表したが、ソロとしては初めてバンドで作ったこの作品、米チャートも好調だ。

「アルバム・セールス・チャート」では、初の1位を獲得。(*アルバム・セールス・チャートは、CDやアナログ盤のフィジカルでの売り上げと、デジタルでもアルバムとして売れたものを集計したもの。ストリーミング数は換算されていない。)また、「ロック・アルバム・チャート」でも1位を獲得した。

エディは、この作品のツアーを2月3日にNYビーコン・シアターで開始し、私も2月4日のNYビーコン・シアターと、2月6日のNJパフォーミング・アーツ・センターのライブを観た。元々アルバムに参加したメンツが超豪華で、スティービー・ワンダーから、エルトン・ジョンリンゴ・スターなどだが、ツアーのメンツも同様に豪華だ。

なんと、ドラムはアルバムにも参加した、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのチャド・スミスだし、ギターも元レッチリのジョシュ・クリングホッファーなのだ。

エディ・ヴェダーのツアーが超豪華。レッチリのチャドと、ジョシュも参加で、ザ・ビートルズからプリンスまでカバー。モトリー・クルーのディスまで。 - pic by Sachyn Mitalpic by Sachyn Mital

さらに、ベースは、ジェーンズ・アディクションのクリス・チェイニーで、ソロ作のプロデュースも手掛けた31歳のアンドリュー・ワット(ジャスティン・ビーバーポスト・マローンなど)もギター。エディは、31歳のアンドリューにとりわけ新たなインスピレーションを得たんだというのが、ライブを観ているとよく分かる。「こんな良いアーティストと出会うのは稀だ」と言っていたし、新作に入っている”Rose of Jericho”の彼のギターを、近年聴いた最も感動したギターだとまで言っていたから。

また、前座を務めたグレン・ハンサードも参加するのでかなりの大所帯だ。これまで、エディのソロ作は、ウクレレやアコギだったし、ツアーもほぼ1人で、大掛かりなバンドになることはなかった。驚いたのは、エディがライブ中に「このバンドは長く続いていく」とも言っていたこと。相当気に入ったのだと思うし、それだけ良い影響を受けたんだと思う。それがアルバムからも聴こえてくる。

さらに今回豪華だったのは、セットリストだ。エディらしく日によって変わるのだが、アルバムにリンゴ・スターが参加したことからも

ザ・ビートルズの”Here Comes the Sun”から、
ージョージ・ハリソンの”Isn’t It a Pity”。
ーまた、両日演奏されたのは、The La’s の”Timeless Melody”。エディが、「リバプール出身だけど、みんなが思う方のバンドじゃない(笑)」と紹介していた。「アルバムは1枚しか発表していないけど、全曲が完璧」と。NYのライブでは、エディが演奏し終わった後に自分で言っていたけど、「今2回は間違えた」と。NJでやった際もまた間違えていた。わけがあってリハーサルがしっかりできなかったそうで、それが場合よっては、このバンドの良いところにもなる。

その他、
ーR E.M.の”Drive”から、
プリテンダーズの”Precious”。
ーエディと言えば、The Whoのカバーでこの日は”I’m One”。
ーまたパール・ジャムでも定番のニール・ヤングの”Rockin’ in the Free World”をNYのアンコールで演奏。これで終わりかなと思ったら、
ー2度目のアンコールがあり、プリンスの”Purple Rain”を演奏したのが感動。しかも、途中から、ジョシュが高音のボーカルを披露していた!

ーまた、トム・ペティもカバーしたのだけど、ソロ作に思い切りトム・ペティな曲”Long Way”が入っている。この曲はトム・ペティっぽい曲ができたと自分でも思ったので、トム・ペティ・アンド・ザ・ハートブレイカーズのBenmont Tenchにハモンド・オルガンをお願いしたら弾いてくれたのだそう。「世界最高のキーボード奏者」と紹介していた。会場からは、”Booooooooooom”という声が上がったので、急いで、「彼とは別に(笑)」と付け足していたが。

ーさらに、リンゴ・スターが参加したザ・ビートルズっぽい曲”Mrs. Mills”についても熱く語っていた。
これは、彼がレコーディングしたアンドリュー・ワットのスタジオに置いていあるピアノが、アビイ・ロード・スタジオにある有名な1905年のSteinwayのピアノと同じものであることがインスピレーションとなって書いた曲。その曲のドラムをリンゴ・スターが引き受けてくれてどれだけ嬉しかったのか、と、さらにサウンドがザ・ビートルズの曲と同じなのは、本当にリンゴがあのザ・ビートルズの曲で叩いた同じドラムをアビィ・ロードスタジオで叩いてくれたからなんだ、と大興奮で語っていた。

ちなみに、アビイ・ロードにあるピアノに”Mrs. Mills”と名前がついていて、ポール・マッカートニーも、ザ・ビートルズのレコーディングなどで弾いているのだけど、ポールが売って欲しいと言ったのに売ってくれなかったそうだ。だから今でもアビィ・ロードにある。その同じピアノをアンドリューが持っていて、そのピアノを、ポールも、スティーヴィー・ワンダーも、エルトン・ジョンも弾いたそうだのだが、大スター達がそのピアノで曲を作っていったことにインスパイアされ、Mr. Millsという女性を想像して、強くて独立精神のある女性を讃える意味の歌詞にもなったと語っていた。

ースティーヴィー・ワンダーが”Try”のハーモニカを引き受けてくれるという連絡が来て最高に嬉しかったこと。また、彼はすぐに思いついて演奏をしてくれたことに感動したと語っていた。

ーまたNJのライブでは、アンドリューを初めてパール・ジャムのコンサートに連れて行ってくれたという高校の生物の先生が来ていた。「あなたがいなかったら今日のライブはなかった」と言い会場が大拍手。「でもそのおかげで、今日最高の席がもらえて良かったね」と会場を笑わせていた。さらに、これもアンドリューのギターソロが気に入っていると言って新作から”Fallout Today”を演奏。

ー会場が静まりかえってしまったのは、新作からの”Borhters of Cloud”。2012年に起きたサンディフック小学校銃乱射事件で娘さんを亡くしたお父さんの1人と親しくなった話を披露した。彼は薬学博士号を持ち、製薬会社に働いていたが、辞めて、今後銃乱射などが起きないよう脳科学の研究をしていた。

エディが2019年にNYに行く予定になっていたので、行ったら会おうと約束していたのに、その2週間前に自殺してしまったのだ。エディはこの日、「彼が体験したことは想像を絶するので、彼が下した判断について俺は批判できない」と語り、「今日共通の友人からメッセージが来て、この曲は彼についてか?と訊かれた。この曲は彼についてではないけど、でも今日は彼を思って歌う」と披露した。

ーパール・ジャムのファンにとって嬉しかったのは、ライブのレア曲”Dirty Frank”が演奏されたことだ。これは、レッチリとツアーしていてその時の影響をモロに受けて書いたものだと言っていた。

モトリー・クルーのディス。
レッチリと言えば、チャドを紹介する時に、「このシルバーで、美しいドラムは、それだけで十分なバンドのエンジンとなってくれる。その台座をわざわざ高くする必要もなければ、回転させたりする必要もない。それをしっかりと指摘しておきたい」と語っていて、会場が爆笑。

実はエディが、NYタイムズのインタビューで語ったことから始まったのだが、そこで彼がサンディエゴのライブ会場などで仕事したことを思い出し、「”Girls, Girls, Girls”とかモトリー・クルーとかってファック・ユーって感じだった。大嫌いだった。それが男性をどんな格好にさせたのか、それが女性をどんな格好にさせたのかってことが嫌いだった。心からむかついた」と当時のシーンを思い出して語っていた。ガンズ・アンド・ローゼズが登場してくれて良かったと。またそんな中で、シアトルの女性たちは、コンバット・ブーツを履いたり、キャット・パワーみたいな格好でライブに来ていて、しっかりと意見を持ち、敬意を払われていた、と。

これを読んで、ニッキー・シックスがパール・ジャムを「最も退屈なバンド」とツイートしたそうなのだが、それを受けて、エディがNJのライブでまた上の発言をしたのだ(笑)。

さらに、ツイート上では、「最も退屈している俺たちのファンが大好きです」とめちゃくちゃ盛り上がってるライブ映像をポストしていた(笑)。

パール・ジャムがこういう悪ふざけをするのも珍しいので、エディの今の開放的なモードを象徴しているようにも思う。

ー豪華ゲストと言えば、LAのライブでは、なんとスチュワート・コープランドがドラムで参加。”Message in A Bottle”をカバー。ニール・ヤングなどもカバーし、チャドがギターを弾いている。


ージョシュ。両日ともジョシュがいかに素晴らしいのかと紹介。「こんなに才能があって、自分がこれまでに会った最も心の優しい人である」とまで語っていた。今もシアトルでバンドと一緒にレコーディングしている、と言っていたけど、パール・ジャムかエディがまだレコーディングしているのかもしれない。どちらにしても、ジョシュはこれから長くパール・ジャムのファミリーの一員となる。

ジョシュはビルボード誌で、今作をレコーディングしている時に「アンドリューと1日に何度も目を合わせて、『エディと一緒に曲を作っているなんて信じられない』って思った。子供の時の一番の夢が叶ったみたいで、あまりに特別だった」と語っている。

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ちなみに、パール・ジャムのコンサートのチケットは、いまだに全っ然取れない。ファンクラブに入っていても取れない。なので、エディがソロで、パール・ジャムで観るよりも小さい会場で、しかもバンドで演奏するとなったら全然取れないの100倍くらい取れない。私は奇跡的に2日分取れて本当にラッキーだった(涙)。助けてくれた方たちに感謝です。

という状況なので、エディがNYで開口一番、「今日どれだけチケットを取るのが大変だったのかよく分かっている。それと俺たちも、このライブを安全に行うために、スタッフも、出演者も全員で厳しい決まりの中で頑張って実現した。みんなここに来るのが大変だったんだから、今この瞬間を大事にして楽しもう」と語った。ビリー・アイリッシュも同様のことを言っていた。これが昨今のライブのテーマになっているように思う。

エディは、NJのライブの時に、ブルース・スプリングスティーンが、このアルバムを気に入ってくれて、インタビューしてくれた、と語っていたが、その映像がポストされている。

この映像を見る前に知っていたけど、ここでも語られているけど、今回のアルバムでエディは亡くなった父と共演している。

エディが父親を知らないで育ったのはご存知だと思うけど、それについては”Alive”でも歌われている。なんと少し前に、彼が親しくする人を通して、エディの父のバンドの音源を入手したのだ。怖くてしばらくは聴けなかったそうだけど、レコーディングの当日にようやく聴いたら、それが自分に向かって歌ってくれているように聴こえた。しかも、歌が上手かったので嬉しかったと語っていた。

それでこのアルバムの最後の曲”On My Way"でエディと父がエコーの中で語り合っているように響くのだ(涙)。「今向かっているよ」と。このアルバムの最強の歌詞は、「愛があれば、無敵なんだ」と”Invincible”で歌っているところだと思うが、それは今の分断された世界に向けて歌っているとも聴こえるし、父と会えた自分に歌っているようにも聴こえて、涙が出そうになる。

ライブのこれまでにない開放感や新鮮さや圧倒的な肯定はそれと関係があるんじゃないかと思う。ライブは2日ともこのエコーのような音源で始まった。



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