史上最高にエモい?グランジな?最新『THE BATMAN』が世界的大ヒット。モデルはカート・コバーン。ニルヴァーナの”Something In The Way”のストリーミングが1200%アップ。日本も今週末公開。

史上最高にエモい?グランジな?最新『THE BATMAN』が世界的大ヒット。モデルはカート・コバーン。ニルヴァーナの”Something In The Way”のストリーミングが1200%アップ。日本も今週末公開。

週末にアメリカ他世界各国で公開された最新の『THE BATMAN-ザ・バットマン-』が予想を上回る大ヒットを記録した。

去年の年末に公開された『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の記録的なヒットに続き、これでコロナ前と同じくらいに観客が劇場に戻ったと関係各所が喜んでいる。私も実はレッドカーペットで取材し、作品も観たけど、ニルヴァーナの”Something In The Way”が流れた瞬間にこれは、ストリーミングが絶対に上昇するはず、と思ったが…..案の定、Spotifyが今日発表。なんと、1200%以上上昇したそうだ。


曲が良いのみならず、映画での使われ方が最高なのだ。映画全体のトーンを決定すると言って過言ではない。例えば、ボンド映画でのアデルの”スカイフォール”も彷彿とさせる。

この曲は、2020年に公開されたティーザーでも使われていて、その時も新世代の間で「この曲何?」と話題となりストリーミング数が上昇し、チャート入りしていた。
https://rockinon.com/blog/nakamura/195408


1.巷ではロバート・パティンソン演じる最新バットマンが、史上最高に”エモい”または”グランジ”と言われている。カート・コバーンがモデル。

a. 最新のバットマンは、史上最高に”エモい”とも”グランジ”とも言われているのだが、ずばり、監督のマット・リーヴスが、”Something In The Way”を聴きながら脚本を書き、カート・コバーンをバットマンのモデルにしたと言っている。これは早くから語っていたので、すでに知っている人も多いと思うが、最近、パティンソン自身も含めこれについてさらに詳しく語っている。

リーヴスは、今回のバットマンを作る上で影響を受けたのは、「1970年代のクラッシック映画である『フレンチ・コネクション』、『チャイナタン』、『タクシードライバー』と、そしてカート・コバーン」だと語っている。

「脚本を書き始めた初期の段階で、ニルヴァーナを聴いていたんだ。それで、”Something In The Way”が流れた瞬間に、曲のトーンが、これだと思えた。それがキャラクターの大事な要素となった。だから曲名は脚本にも書いてあったし、繰り返しの部分も書いてあった。そこで物語が円を描くようにしたかったんだよね。

僕の中では、ブルース・ウェインは、世捨て人のロック・スターだったんだ。

例えばコバーンは、音楽に取り憑かれていたわけだけど、名声の重荷とは良い関係性にはなかった。それがブルースにも当てはまると思ったんだ。なぜなら彼は、誰もが彼と彼の家族の悲しい歴史について知っていることに取り憑かれていたわけだからね。だから家の外から出ないで、古い邸宅の中で1人でジャムしているようなものだ。ただ、ギターとアンプを使う代わりに、彼はバットマンになるんだ。

これまでに描かれていない方法でどうやったらブルース・ウェインを作れるのか?と考えた時に、この曲を聴いて、これまでのブルース・ウェインのようにプレイボーイではないバージョンを思い付いた。彼に悲劇が起きたことで(両親が殺されたのを目撃する)、人目を避けて世捨て人のようになり、外から何をしているのか分からなくなり、人の言うことも聞かなくなり、無謀になり、自殺願望を持ち、ドラッグ中毒になったら?と想像してみた。

それで、フィクション版のカート・コバーンを描いたガス・ヴァン・サントの『ラスト・デイズ』を思い出した。崩壊していく館に住んでいるようなブルース・ウェインをね。この時点で、彼は億万長者であるがゆえの罠みたいなものはどうでもいいと思っている。それに彼は、ドラッグ中毒みたいなものだったと思うんだ。この場合彼が中毒になっていたドラッグは、復讐したいという衝動だけどね。それはクリエティブな衝動にも似ている。カオスな世の中を成立させる唯一の方法だから。それが時に音楽であり、映画であり、彼の場合は、カート・コバーンなバットマンだった」


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b. エモなアイライナーについて。

ロバート・パティンソンのバットマンを「2005年くらいのマイ・ケミカル・ロマンスのMVみたいだった」と書いているメディアもある。

グランジなバイブのゴッサムを象徴するかのように、パティンソンは黒いアイラナーをしているのだが、それについて、監督は、

「マスクをしてて、アイライナーをしないって言うのはおかしいと思う。どのバットマンもアイライナーはしているはずなんだけど、今回の場合は、マスクを外した瞬間に、汗で崩れ落ちているのが見えるのが最高だと思ったんだ。それによってこのキャラクターになる過程が見えて、舞台的な効果があるから相応しいと思った」


c. “Something In The Way”の使用許可を取ることについて。

「ワーナー・ブラザーズが使用許可を取りに行ってくれて許可が降りた。これはよくあることだけど、先方に『この曲を使うのってどれくらい大事なの?』と訊かれる。それで僕は、『すごく重要です。ただちょっと音が出るだけじゃなくて、テーマ的な観点から言ってすごく大事なんです』と答えたんだ」


d. ロバート・パティンソンについて。
監督曰くパティンソンは、

「脆さがあり、絶望感があり、それでいてパワーがある。最高のミックスだと思った。それからカート・コバーンと似ているところもあると思ったんだ。彼はロック・スター的なルックスでありつつ、世捨て人的にも見えるから」


e. コートニーは反発!?
それで思い出したけど、10年くらい前に、カートの伝記『Heavier Than Heaven』の映画化権をコートニー・ラヴが持っていて、カート役をロバート・パティンソンにするという噂が出た。その時、コートニーがあり得ないと激怒していた。

「ロバート・パティンソンなんてまじであり得ない。冗談じゃない。ライアン・ゴスリングか、ジェームス・マッカボイにして」と。

それには、パティンソンも反発していて、「そんなオファーもらってないし、もらっても絶対断ってた。僕は、彼よりずっと背が高いし、歌えないし、全然彼に似てないし、あり得ないよ。そんなこと言うなんてひでえ」と。さらに「ニルヴァーナが大好きだから恐れ多くてやれるわけがない」とも言っていた。まさか、カート・コバーンなバットマンになって戻ってくるとは。


2.パティンソンが語る。

パティンソンは、自分が想像していたバットマンとカートは真逆だと思った、と語っている。

LAタイムズ紙で、パティンソンが語っている。

「マットが最初のミーティングで、カート・コバーンがこの役の要であると言った。そう言われただけで、僕の頭の中に何かが植え付けられた。それから、自ら苦痛を課すことにはいつも興味があったし、自分ではどうして良いか分からないものを相続し、でもそれを完全に捨てることもできなことについても。それから、インスピレーションとしては監督がマイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ/『ゴッドファーザー』)もあげていた」


パティンソンはさらに最近TVのインタビューでもこう語っていた。

「最初マットに、カート・コバーンにインスパイアされたと聞いた時に、”ええ?”って思ったんだ。僕が想像していたブルース・ウェインの真逆だと思ったからね。面白いのは、最初の衣装合わせのミーティングの時に、もう本当に本当に本当にカート・コバーンっぽくしようと思って、ナイトガウンを着て、バッグス・バニーのフワフワしたスリッパを履いて、めちゃグランジにしようとしたんだ。でも、そのアイディアはボツになったね(笑)」


ちなみに、パティンソンは同じインタビューの中で、「こんなに映画を観るのを緊張したのは久しぶり」とも語っていて、「今のガールフレンド(のスキ・ウォーターハウス)が普段はこういう映画は観ないと思うのに、泣いてくれた」と感動していたのでかわいい。わざわざ書いたいのは、スキ・ウォーターハウスが4月22日にデビュー作『I CAN’T LET GO』を出すから。

3.悪役のインスピレーションもニルヴァーナ。

バットマンと言えば、悪役だが、今回最高に不気味な悪役リドラーを演じたポール・ダノもインスピレーションはニルヴァーナだと語っている。彼も、撮影の合間に”Something In The Way”を聴いていたそうだ。

「脚本の中にマットが、ニルヴァーナの”Something In The Way"って書いていたんだ。それを読んだ瞬間に、僕にとってもそれがめちゃくちゃ大事になって、その歌詞もメロディも。繰り返しも。役作りの上でものすごく大きなインスピレーションになったよ」



悪役もスーパーヒーローも、ニルヴァーナがインスピレーションというのが興味深い。


4.キャットウーマンはゾーイ・クラヴィッツ

念のため、今回のキャットウーマンは、ゾーイ・クラヴィッツだ。もちろんレニー・クラヴィッツの娘さんで、父もツイートしていた。


「このアイコニックな瞬間、おめでとう。すごく誇りに思っているよ」と。

子供の時の写真。


ゾーイは、ネコの研究をして、ミルクを猫の餌入れから舐めたりしたそう。その成果あってか、動きがめちゃくちゃクールでセクシーだ。まだキャットウーマンになる直前なので、マスクがニット帽に穴を開けただけのストリートな感じなのも彼女らしくてカッコいいし、新しい!

この写真は、映画とは違うスタイルだけど、雑誌『Wonderland』に掲載。



劇場で観ると、普段のスーパーヒーロー映画よりカップルで来ている人たちがものすごく多くて、絶対にパティンソン効果だと思った。女子がたくさん行ったのは、ヒットした理由のひとつでもあると思う。

それと3月19日発売の”Cut”4月号に掲載する『DUNE/デューン砂の惑星』の監督ドゥニ・ヴィルヌーヴと、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』の監督ジェーン・カンピオンのインタビューでも言っていたけど、女性性を描くのがいかに大事なのかということ。
https://www.rockinon.co.jp/business/publication/magazine?genre=cut

今回のバットマンが、これまでのマスキュリティに丸出しの俳優ではなくて、典型的なスーパーヒーローではないむしろ逆のナヨっとしたパティンソンであるというのが、何よりのポイントだと思う。男優ならティモシー・シャラメもそうだし、音楽シーンではハリー・スタイルもそうだと思うけど、女性性を意識しているアーティストとクリエイター達が時代を前に進めていると思うから。

日本版の予告編はこちら。

映画は3時間あるので、劇場で携帯もテレビのニュースも見ないで過ごせる素晴らしい現実逃避にもなる。ぜひ”Something In The Way”の世界観にどっぷり浸かってください。



ロッキング・オン最新号(2022年4月号)のご購入は、お近くの書店または以下のリンク先より。

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