ギレルモ・デル・トロの”怪獣”との恋物語+ダーレン・アロノフスキーの”ホラー”。奇才監督の放った強烈な2本[トロント映画祭6]

  • ギレルモ・デル・トロの”怪獣”との恋物語+ダーレン・アロノフスキーの”ホラー”。奇才監督の放った強烈な2本[トロント映画祭6] - Kevin Winter Getty Images/TIFF

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  • ギレルモ・デル・トロの”怪獣”との恋物語+ダーレン・アロノフスキーの”ホラー”。奇才監督の放った強烈な2本[トロント映画祭6] - TIFF

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  • ギレルモ・デル・トロの”怪獣”との恋物語+ダーレン・アロノフスキーの”ホラー”。奇才監督の放った強烈な2本[トロント映画祭6] - Kevin Winter Getty Images/TIFF
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今年のトロント映画祭で最も話題となった映画と言ったら、ギレルモ・デル・トロのファンタジー映画『Shape of Water』と、ダーレン・アロノフスキーの『Mother!』だろう。奇才と言える両監督なだけに、方や、”恋愛ファンタジー”と言える作品であり、方や、”ホラー”と言える作品だが、その内容はあまりに型破りだった。

1) 『Shape of Water』
最もあり得ないような設定の中で、生き物と生き物が、純粋に心だけで惹かれ合って恋に落ちていくことができるのだ、ということを証明してみせた、とてつもなくピュアな恋愛ファンタジー映画。しかしさすがデル・トロ監督。舞台は、1962年、冷戦下のアメリカ政府が極秘に持っている実験室だし、主人公は、掃除婦として働く口のきけないエリサ(サリー・ホーキンス)と、そこに捕獲されている魚人である。孤独なエリサは、政府の実験台になって可哀想な魚人に興味を持つ。自分が口がきけないことも関係なく、「自分を自分として見てくれている」と心が惹かれていくのだ。

設定や主人公が突飛であるだけでなく、エリサは、毎日お風呂で日課としてマスターベーションをしていたり、トーンとしては時々『アメリ』を思い出すような恋愛ファンタジーなのだが、デル・トロ色も満載だ。セットにも日本の怪獣番組などの影響を随所に感じる。しかし、究極のアウトサイダー同士の恋愛を描いているだけに、本当に何が美しいのかが露になっている、とも言える作品なのだ。

最も話題になっているのは、水の中で行われるラブ・シーン。詳しくは観てのお楽しみ。

ベネチア映画祭では、最高の金獅子賞を受賞しているし、サリー・ホーキンスの演技力も絶賛されている。『パンズ・ラビリンス』以来の傑作という評価もあるくらいの作品。今後のオスカーレースでも大注目の作品となるだろう。

予告編はこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=XFYWazblaUA


2)『Mother!』
ダーレン・アロノフスキーが、今ハリウッド一ホットな女優、ジェニファー・ローレンス主演で作ったホラー映画『Mother!』。個人的にはホラー映画と言われていたので構えて観たのだが、怖いというより笑ってしまう場面が多かった。あまりに多くのメタフォーに溢れているため、観終わった後の感想や、何が描かれているのか、友人のジャーナリスト達と徹底的に話し合い、みんな解釈が違い、それぞれに感想も違うという、非常に話し甲斐のある作品だ。

物語は、ハビエル・バルデム演じる作家とジェニファー・ローレンス演じる若き妻がNY郊外の一軒家に引っ越しするところから始まる。妻は、その”家”を自分の思う通りに作っていきたいのだけど、次々に邪魔が入るのだ。エド・ハリスとミシェル・ファイファーが演じる夫婦が勝手に突然訪ねて来て、彼らの家に泊まったり、かと思うと、作家の熱狂的なファンが大量に押し掛ける。そのため、”家”が血を流し始めるのだ。しかし、作家は、妻の気持ちは無視して、彼らが自分のファンであるため歓迎してしまう。なので、妻は、自分はこんなに尽くしているのに、作家が自分のことを本当に愛していないのではないかという不安に駆られる。しかも、子供が出来たのに、「これでも私を愛してくれないの」と、泣き叫ぶのだ。そして、作家に自分を捧げまくるのだ。

というわけ、個人的な解釈としては、つまり作家のエゴが描かれた作品に思え、ジェニファー・ローレンスみたいな今一番輝いている女優が、そのために自分を捧げまくるのだ。もちろんジェニファーとしてはだからこそやり甲斐があった、と言えると思うのだが、それ以上に、それって女性軽視?に思えてしまって、どうしても解せないのである。なので、ダーレンの解釈なども聞いてみたのだが、「それぞれの人の反応が違うので、それぞれの人に経験して欲しい」という答えになっていない答えだった。ジェニファーは、「こんな狂った話しって聞いたことがないから本当に天才だと思った」と語っていた。聖書のメタフォーになっていると書いている人もいるし、寓話的だと書いている人もいるし、Mother=地球を意味していて、それが我が儘な人間に破壊されている、と言っているような人もいる。ローリング・ストーン誌のピーター・トラバースなどは高評価をしていたが、映画は「好きか嫌いのまっぷたつに分かれるだろう。その間はない」と言っていた。

なのでどちらにしても、みなさん、とりあえず絶対に観ないといけない作品です。その後で私の解釈の間違いを指摘してください。徹底的に話し合いましょう!

予告編はこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=XpICoc65uh0
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