2017年アメリカの興行成績ベスト3は全部女性主人公の映画!+〈ゴールデン・グローブ賞直前〉女優達が授賞式で#metooを訴える。

2017年アメリカの興行成績ベスト3は全部女性主人公の映画!+〈ゴールデン・グローブ賞直前〉女優達が授賞式で#metooを訴える。
アメリカでは、1月7日夜にゴールデン・グローブ賞が発表される。日本では、1月8日午前10時〜AXNで生中継される。
https://www.axn.co.jp/programs/goldenglobe

レッドカーペットの模様はFacebookで生中継されるので、これは日本からも見られるのでは?
https://www.facebook.com/GoldenGlobes/

そこで今年ひとつ注目して欲しいのが、女優も男優も、セクハラを訴える#metoo運動を支援、団結するために、黒い服を着るということ。さらに、”Time’s Up”というバッチもつける予定だ。2018年1月1日に、ハリウッドの女優達300人が中心となり、ハリウッドのみならず、アメリカ中の職場でセクハラを訴え、訴訟を起こすための支援をする団体”Time’s Up “を作ったのだ。ナタリー・ポートマン、リース・ウィザースプーンなどが参加。コートニー・ラヴも支持を示していた。

ナタリー・ポートマンは、この運動に参加したことをきっかけにインスタグラムを開始している。

今年の賞レースで興味深いのは、具体的な団体を作る以前に、ハリウッドや、テレビ、音楽なども含めたエンタメは、ここ数年、政府や社会の体制に反発した非常に優れた作品を排出してきたことだ。女優達は、例えばジェニファー・ローレンスが女優のギャラが男優に比べて破格に安いことを数年前に訴えたし、女性監督の作品が少なすぎることなどについても、反発する運動が始まっていた。それが、ワインスタインのセクハラ告発に繋がっていったのだ。以下これまでの動きがあったからこそ今年発表され、ゴールデン・グローブにもノミネートされる成功を収めた作品。

1) 『The Handmaid’s Tale』

アメリカにおいて、去年今のトランプ政権を生きる女性達の気持ちをあまりに的確に代弁していると大絶賛されたTVシリーズが『The Handmaid’s Tale(原題)』だ。これはHulu制作の作品で大ヒットした(日本でも2018年放送予定)。1985年にマーガレット・アトウッドが書いた小説『侍女の物語』を原作としてこれまでも映画化されてきたが、2017年以上にハマる年もなくその人気は現象化したとすら言える。内容は簡単に言うと、ディストピアな世界を舞台にしていて、女性は誘拐され、その国を支配する一人の男性の奴隷となる。レイプされ子供を産むのが使命なのだ。これが、現在の超保守的なアメリカ政権をそのまま反映しているようで、見ているだけで、女性としては毎回あまりにリアルで震えがくる体験となる。のみならず、映像の作り方、脚本など、作品としても毎回唸るほどアーティスティックで完璧。アメリカ国内で、中絶する権利を廃止しようとする州議会などが出てくると、この印象的な赤の衣装を着て抗議をする人々が続出した。「NYタイムズ」紙も全米各地で起きた『The Handmaid’s Tale』なプロテストを報じている。
https://www.nytimes.com/2017/06/30/us/handmaids-protests-abortion.html?_r=0

エマ・ワトソンも、この本を女性の権利を擁護するキャンペーンの一環としてこの本として推奨していた。

ゴールデン・グローブにおいては3部門のノミネートされていて、この作品の主演女優であり、プロデューサーも務めたエリゼベス・モスが主演女優賞を受賞するのは確実視されている。予告編。
https://www.youtube.com/watch?v=PJTonrzXTJs

2)『ビッグ・リトル・ライズ ~セレブママたちの憂うつ~』

HBOが制作したミニシリーズで、エミー賞はすでに8部門獲得。ゴールデン・グローブは6部門ノミネートされている。作品賞の他は全て俳優。主演のニコール・キッドマン、リース・ウィザースプーンが、同じ主演女優賞部門で、ローラ・ダーンと、シェイリーン・ウッドリーが助演女優賞、そして、アレキサンダー・スカルスガルドが助演男優賞でノミネートされている。

この作品は、『The Handmaid’s Tale』と同様に、主演のニコール・キッドマンとリース・ウィザースプーンが自らプロデュースして作った作品だ。それこそがハリウッドの男尊女卑を端的に表しているわけだが、男性プロデューサーばかりのハリウッドにおいて、彼らに任せていると、いつまでも男優が主演の作品ばかりしか作られないので、女優自らが、自分達で良い作品をプロデュースするしかないのだ。とりわけ、20代を過ぎて、ルックスだけで起用されているだけではない作品に出ようしたらそうだ。

ニコール・キッドマンにとっては、4人の母親が主人公のこの番組はだから危険な賭けでもあった。なので結果、大成功した後テレビ番組に出演し、「この番組は、私とリースで本当に頑張って完成までこぎつけた作品だった。そしてそれが大成功した。それでいつもこう言うのだけど、女性が力を合わせる決意したなら、物事をやり遂げることができるのよ!そうでしょ?」と語り、会場の観客から大喝采を受けていた。
https://www.youtube.com/watch?v=IsZRgiQQi9c

同タイトルのLiane Moriartyによる原作を元にしたこの作品は、母親4人を主人公に、それぞれが豊かで”セレブ”的な暮らしをしているように見えるのだが、その水面下で、それぞれどれだけの問題を抱え、それをどう言えないでいるのかなどがニュアンスがあり、深く、誰もが共感できる物語として描かれている。しかもこれまで描かれてこなかったような内容であることも画期的だった。エミー賞で主演女優賞を受賞したニコール・キッドマンがそのスピーチで、女性の虐待について訴えていたが、実際彼女が演じる役はすごい。夫を演じるアレキサンダー・スカルスガルドがDV夫を演じるのだが、キッドマンを殴ったり殺しかけたり、ものすごい緊迫感のある演技で心配になるくらい。しかし外見的にはあまりに美しすぎる家族で、キッドマン演じる妻がいかにそれを隠し続けるのかが見所の一つだ。

日本でも放送されたようで予告編がある。この予告編は派手な盛り上げ方でははちゃめちゃなドラマのように見えるが、この作品は、どんよりした空気感とニュアンスこそが見どころだ。
https://www.youtube.com/watch?v=AlmSnTPLuXs

キッドマンはじめ、ローラ・ダーンもゴールデン・グローブを受賞すると言われている。

3)『I, Tonya(原題)』, 『3 ビルボード』、『Molly’s Game(原題)』、『Battle of the Sexes(原題)』、『Lady Bird(原題)』、『Feud(原題)』

以上の映画5作とテレビシリーズ1作も、女性が主人公、または女性監督の作品だ。男性社会への反発をそのまま描いた作品もあれば、『3ビルボード』のように、警察という体制に女性が反発した作品もある。今年注目される映画は、もちろん作品が良いというのは大前提だが、さらに、今の社会をどう映し出していてより共感できるのかが大きなポイントだ。

4)『ワンダーウーマン』が選ばれなくて大ブーイング!
以上の背景を踏まえても、『ワンダーウーマン』こそ、2017年を代表する作品だ。それをノミネートしなかったゴールデン・グローブは何か大事なことを見落としている。アメリカの多くのメディアも、今回のノミネーションの最大の驚きと報道していた。
https://www.hollywoodreporter.com/news/golden-globes-snubs-2018-big-sick-wonder-woman-veep-not-nominated-1066156

『ワンダーウーマン』は女性がスーパーヒーローを演じた稀なアメコミ映画化であるばかりか、世界的に大ヒットを記録した作品だ。アメリカ国内においては、あの『アナと雪の女王』も抜いて、女性監督の作品として史上最高の興行成績を記録したのは当然、ワーナーブライザーズの制作した映画としては、なんと史上3位!!!の成績を獲得したのだ。さらにスーパーヒーロー映画としては、全体でなんと5位。スーパーヒーローのオリジンものとしては、なんとこれまた1位である!! 本来ヒラリー・クリントンが女性初の大統領となったアメリカを何らかの形で象徴していたはずの作品だったが、むしろならなかったことで、より女性の権利の重要さ、そして女性がリーダーであることがどれだけ新しく、力強いことなのかを、実感できる作品。のみならず、誰もが楽しめるエンターテイメントであるところも偉大だ。しかし、女性から特別な共感を得たことが、これだけ多くのスーパーヒーロー映画がある中で、数々の記録を塗り替えた理由でもあると思う。

ここでジェームズ・キャメロンが、この成功に対してコメントしたことが、大バッシングを受けた。
「『ワンダーウーマン』への賞賛は間違っている。彼女は、物として見られているようなアイコンであって、古いハリウッドの男たちがこれまでと同じことを繰り返しているのみじゃないか!映画が個人的に好きじゃなかったと言ってるわけじゃないんだ。だけど、あれはむしろ後退しているよ」と言ったのだ。さらに「(自分が監督した)『ターミネーター』のサラ・コナーの方がフェミニストのアイコンと言える」とまで言ったから大ブーイングを喰らった。「女性監督の成功が許せないだけだ。キャスリン・ビグローが別れるわけだ」とまで言われていたりした。

この作品は主演のガル・ガドットが、いかにも典型的なハリウッド女優ではなくて、アメリカ政府が移民を阻止しようとする風潮がある中で、イスラエル人であるということも、意味があることだった。

最近Amazonが発表したところによると、『ワンダーウーマン』は、世界一レンタルと売り上げを記録した映画だったということ。これから発表されるアカデミー賞が『ワンダーウーマン』をどう扱うのか大きく注目されている。

5)2017年、アメリカの興行成績トップ3は何と全部女性が主人公だった!

去年のアメリカでの興行成績トップ3が発表された。
1位は、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』、2位は、『美女と野獣』、3位は、『ワンダーウーマン』!!!
http://www.boxofficemojo.com/yearly/chart/?yr=2017

これまで男優の作品が圧倒的に多く、男優のギャラの方が圧倒的に高かった。それがいかに間違っていて、不公平で、偏見によるものだったか、この成功が示している。

ゴールデン・グローブのノミネーションはこちら。
https://www.goldenglobes.com/winners-nominees

オスカーのノミネーションは、1月23日に発表される。
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