トム・ヨークがBBCのRadio 6に出演し、『サスペリア』のサントラからライブ映像を3曲も公開している。こちら。
"Suspirium"
"Open Again"
"Unmade"
ちなみに、番組は1時間あり、トム・ヨークが選曲したスティーブ・ライヒ、ジェームス・ブレイクに、なんと坂本龍一、さらに、『サスペリア』に収録されなかった曲も紹介されている。全編はこちらで聞ける。
https://www.bbc.co.uk/sounds/play/m0000xfz
さらにサントラについてインタビューにも答えている。以下要約。
https://youtu.be/CfSFyLo0FXE
●サントラはどこから始めたか?
「脚本から。きっかけとなったのは、”Susprium”という曲だった。脚本を読んで驚いたのは、メランコリーがあったこと。それって全くホラー映画っぽくないからね。この映画で彼が描こうとしていたのは、人を怖がらせることではなく、それとは違う、それ以上のことだった。それは、闇を認識するということ、だったと思う」
「このアルバムで書いたことは全て、人が僕に頼んだから書いたものだ。それってなかなか良いことだった。自由に思えることだった。僕のアイデンティティであるという意識から解放されていたわけだから。映画のシーンによって、その時になりたい人になれば良かった。四重奏の曲も書いたし、不気味なシンセサイザーの曲も書いた。ドイツの合唱隊の曲も書いた(笑)」
「僕がサントラをやることにしたのは、ルカ(・グァダニーノ監督)に何度もお願いされたから。僕としては、『僕がサントラをこれまで一度もやってないのは知ってるよね?』って感じだった(笑)。だけど、ルカはそんなの全く問題ないって感じだった。だから『分かったよ』って言ったんだ」
●いつもやっていないことをやるのは楽しかったですか?
「いや、難しかったし、簡単ではなかった。『いつもと違うことをやるのは、めちゃ楽しい!』というものではなかった。だから、どういうことなのか?自分は何をしているのか?って深みにはまっていたし、そうすると僕の頭の中の小さな声が『ハハ!』と笑っていた。だけど、LCO(ロンドンコンテンポラリーオーケストラ)との作業となり、僕が書いた曲が楽譜に落とされ、それが演奏されるまでになった頃には、『そうか。音楽なんだから楽譜に書かれていても、僕のコンピューターを左から右にスクロールするのも同じだ。全部同じだ』と思えた。
だから、僕にとってのハイライトは、怖がる必要はないと分かったこと」
●最終的にはプライマルな本能に従ったということですよね?
「だってそれ以外何もないからね。作曲をするというよりは、絵を描いたりするのに近かった。作曲というのはストーリーテリングであり、モジュレーションがあり、何があり、これがあり、て感じだけど。今回もそれは使ったけど、でも、例えばただノイズを作ることができた。それっていつもやってみたかったことだった。バンドで曲を作る時は、コラボレーションという作業の中では、何かしらの方向性に向かわないといけない。だけど今回は自分1人の作業だったから、それとは違う。もちろん、限界はあるし、自分が行きたい場所というのはある。
例えば、あるメロディを見つける方法を模索する。そのメロディが行きたがっていないような場所へ行こうとしたり、そのメロディを理解しないような機械にそれを撒き散らしてみたりできた。そうすることで何が返ってくるのかを見ようとした。それから、使い方が分からないおもちゃをいじってみたりした。それがスタジオ作業の主要な部分であり、マニュアルなんて読まないでとにかくプラグをつなげてみろ、ってことなんだ。そうやってこのサントラの80%は作ったんだ(笑)」
「今回の経験から学べたことがあって楽しかった。自分の持っていた知識を違う視点から見ることができたから。これまでは作曲という視点から常に始まるものだった。それ自体にまず限界がある。色んなことをエクスペリメントはできるけど、それを必ず自分が書きたいと思っている曲の中にはめていかなくてはいけないから。結局70,80%は消えてしまう。でも今回の場合は、他の人のアイディアやコンセプトを元に曲を書いているわけだから、それは問題ないんだと思えた」
「この映画は、ホラー映画だけど、全体として何が描かれているのかと言えば、それは、人々が死を追いかけることについてだと思う。または、死を避けようとしていることについて。映画に出てくる儀式やダンスや動きというのは、全て死をいつわるためにあるんだと思う。それが僕の心に引っかかった部分だった。そこにある悲しみが」
●あなたの息子さんのノアがドラムを叩いていますよね。
「うん、そうだね。ノアが」
●家族と一緒に仕事するのはいかがでしたか?
「最高だったよ。自然なことに思えたんだ。彼がドラムを叩いているのをいつも聴いているからね。彼は素晴らしいミュージシャンなんだ。だから彼がドラムを叩くのは、すごく普通のことに思えた。それに娘はアートワークを手伝ってくれたし。2人とも家にいて、そういうことをいつも一緒に話しているわけだから。僕の中には、彼を音楽からは守りたいというところもありはしたけど、でも、いいよ、ってね。彼はドラムを叩いたわけで、彼には誇りに思ってもらいたいな」
●最後に一つ訊かせてください。あなたは今ハッピーですか?
「うん、なんとか。君は?」
●私も、今日はなんとか。
「うん、僕もだよ。仕事している時はハッピーだし、僕の愛する人達に問題がなければハッピーだし。うん、だから大丈夫だよ。ありがとう」
と言いつつ、そう言って目をつぶるのでなんか泣けてくる。映像を見てみてください。
『サスペリア』はアメリカでこの週末に限定公開され、アート系の映画として劇場数で換算すると今年最高の興行成績を記録した。
https://deadline.com/2018/10/suspiria-opens-big-with-years-best-average-can-you-ever-forgive-me-solid-specialty-box-office-1202490977/
個人的には、オリジナルがそうであったように、トム・ヨークの曲をもっと華々しく使ってくれたら良かったのにとも思った。
また、映画の予告編もYouTubeにて公開中だ。
https://youtu.be/BY6QKRl56Ok