最新作『ラフ&ロウディ・ウェイズ』がアメリカでは今週6月19日、日本盤は7月8日に発売となるボブ・ディランだが、なんとNYタイムズで超レアなインタビューに答えている。
新作について、自分の死について、史上最高だと思う曲から、 ザ・ローリング・ストーンズの曲で自分が書きたかったと思う曲について、コロナ禍について、また彼の故郷のミネソタ州で起きたジョージ・フロイドの死についてなど、現在カリフォルニア州マリブにいるディランに訊いている。
6000字もある長いインタビューだが、以下その中からいくつか紹介。
1)ジョージ・フロイドの死について
ジョージが苦しめられてあのように死ぬのを見て、とてつもなく気分が悪くなった。あれは醜いを通り越している。フロイドの家族のためにも、国のためにも、正義が迅速に訪れることを願う
2)世界的に広がったパンデミックに、聖書的なものを感じるか?
ここからやってくる何かの前触れなのではないかと思う。確かに世界を襲い、広がったが、でも聖書的と言えるかな? 人々の悪行に対する悔やみの警告なんだと言いたいのかな? だとすると、世界が天罰を受けることになると、示唆していることになるが。傲慢さが行き過ぎれば、破滅的な罰を受けるというのはあると思う。もしかしたら我々は今破滅の直前にいるのかもしれない。このウイルスの捉え方は無数にあると思う。でも僕はなるがままに従うしかないんと思っているんだ
3)コロナ禍でカリフォルニア州マリブにいて、絵を描いたり溶接をしたりしているのか?
そうだね、少しはね
4)楽曲“I Contain Multitudes”に、「生と死と同じベッドで寝ている」という歌詞があるが、自分の死について考えるか?
人類の死については考えるよ。人類の長く奇妙な旅路についてね。軽く捉えているわけではないが、人間一人一人の人生というのは、一時的なものでしかない。それがどれだけ強靭でも、偉大でも、いざ死ぬとなったら脆いものだ。つまり、そんな風に一般的な概念としては考えるけど、自分のこととしては考えてないな
歌詞はこちら。
https://www.sonymusic.co.jp/artist/BobDylan/info/518441
5) この曲に、ザ・ローリング・ストーンズが登場するが、自分が書きたかったと思うストーンズの曲は?
どうかな、分からないけど。“Angie”と、“Ventilator Blues”と、えっとそれから何かな、そうだ。“Wild Horses”だよ
6)“Murder Most Foul”について
これはノスタルジックな曲ではない。過去を美化しているわけでもないし、失われた時代を送別するような曲でもないんだ。この曲が今について語りかけてきた。それはいつだってそうだ。とりわけ歌詞を書いている時はね
日本語歌詞対訳はこちら。
https://rockinon.com/news/detail/193427
7)この17分の曲でディランとして初めてのビルボード1位を獲得したことについて
驚いたよ。うん
8)この曲に、「ドン・ヘンリーをかけておくれ、グレン・フライをかけておくれ」と出てくるのには驚いたが、イーグルスの曲で好きな曲は?
“New Kid in Town”、“Life in the Fast Lane”、それから“Pretty Maids All in a Row”だな。それは史上最高の曲のひとつと言えると思うよ
9)自分の曲が19曲使われているミュージカル“Girl From North Country”を観て泣いたことについて
観たし、すごい影響を受けたんだ。自分に関係のあるミュージカルとしてではなくて、一般の観客のつもりで観たんだ。ただ観てみたんだよね。そしたら最後には泣いてしまった。なんで泣いてしまったのか分からない。幕が降りた時に本当に感動してしまったんだよ。心からね。もう一度観たいと思っていたのに、ブロードウェイが今閉鎖していて本当に残念だよ
https://youtu.be/ndY76HuFc5c
このミュージカルには、ディランの曲は使われているが、物語はディラン自身の人生とは関係ない。ロンドン、NYオフ・ブロードウェイを経て、2月にブロードウェイで開始したばかりだった。しかし、NYのブロードウェイは現時点では早くとも9月6日までは閉鎖と決まっている。
また、ディランの最新作の収録曲が発表された。
ディランの新作に関する情報はこちら。
http://www.sonymusic.co.jp/artist/BobDylan/info/518545
ディランは、Heaven's Doorというウィスキーも出している。ちなみに、ディランが溶接しているものがボトルのデザインになっている。
https://www.heavensdoor.com/buy-whiskey?gclid=EAIaIQobChMIjdbB5dGB6gIVGEWGCh2CRwFqEAAYASAAEgKAb_D_BwE
ジェームス・ボールドウィンとの写真もあるが、ボールドウィンは、現在Black Lives Matterの最中、人々が最も引用する作家の1人だ。ディランは、1963年NYで行なわれた「Emergency Civil Liberties Committee's Bill Of Rights」のディナーで彼に会えた時すごく喜んでいたと、写真を撮ったカメラマンのテッド・ラッセルがNYで個展を開いた際に言っていた。
この写真は、”Bob Dylan:NYC 1961-1964"に収録されている。個展は、Steven Kasherギャラリーで行なわれた。
http://www.stevenkasher.com/exhibitions/ted-russell-bob-dylan-nyc-1961-1964
今回のインタビューで、ジョージ・フロイドの死については取材が終わった後に追加で訊いたようだが、Black Lives Matterについても訊いて欲しかった。