トラヴィス・スコットが復帰予定だった9月の米フェスがキャンセル。英米ではメジャーフェス以外はチケットが売れない問題発生中。音楽ファンが金欠だから(私も)?!

トラヴィス・スコットが復帰予定だった9月の米フェスがキャンセル。英米ではメジャーフェス以外はチケットが売れない問題発生中。音楽ファンが金欠だから(私も)?! - pic by Mykiaela Pierre Louispic by Mykiaela Pierre Louis

フェスやコンサートが戻って来て嬉しいかたわら、そんなに一度にたくさん戻って来ても、全部は行けない悲しみと単純にもうお金がないという現実で葛藤している音楽ファンの皆さん多いのでは? 私は思い切りそうです(笑)。

アメリカではこの週末にトラヴィス・スコットが、去年自分のフェスで10人もの人が亡くなるという悲しい事件が起きてから初のフェス復活で話題となっていたラスベガスのDay N Vegasがフェスごとキャンセルされて、ちょっとした衝撃が走っている。

というのも、このフェスは、コーチェラのプロモーターによるフェスで、つまりアメリカでは一番成功、儲かっている会社による開催。去年は、ケンドリック・ラマーがヘッドライナーだったので私も観に行ったけど、しっかりと運営されている良いフェスだったし成功に終わっている。

それなのに、今回表向きの理由は、「物流、タイミング、制作を合わせた問題」って?少し意味が分からない。つまり、それってフェス全体の運営ってことで、すわ、チケットが売れなかったのでは?と思ったら、ビルボード誌に内部の人が、やはりチケットが売れなかったと発言している。

この記事によると、チケットの発売が開始した日も、翌日も、目標を達成しなかったので、すでに問題ありと分かっていたそうだ。

さらにパンデミック後のツアー、フェスキャンセルのポリシーが変わったそうで、これまではチケットが売れないなど主催者側の理由でフェスがキャンセルされた場合、アーティストにはギャラが100%支払われることになっていたのだが、パンデミック後には、それが50%で良いことになった。つまり、その支払い金額と、開催して赤字を計算したら、その方が安全だったということなのかもしれない。

ビルボード誌によると、アメリカでは今年前半開催のコーチェラなどは当然売り切れたが、これから後半に開催されるフェスは、チケットが売り切れてないそう。

そもそも、このフェスだってかなりの大物が出演だし、コーチェラのプロモーターによるフェスだ。それなのにキャンセル。今月末にローリング・ラウドフェスがマイアミで開催で、ケンドリック・ラマー、Ye、フューチャーという最強といえるメンツが揃っているのに売り切れてないそうだ。

この記事の締めくくりでは、「単純にもうみんなフェス用のお金が残ってないのでは」と書かれている。

それを読んで思い出したのは、同じ現象がイギリスでも起きているという話。

ガーディアン紙が少し前に報じていた。グラストンベリーや、レディングなどの有名なフェスはすぐに売り切れたが、それ以外のThis Is Tomorrowなど小さいフェスがいくつもキャンセルになっている。主催者は、「いつもだったら12月の時点で売り切れるのに、発売した瞬間に今回はおかしいと思った」と、上のフェスと同じことを言っている。

その記事にはもう少し詳しい分析が語られていて、
大きい理由は、やはり上と一緒で、
1)物価の高騰により生活費だけで大変で、フェスのチケットを買うお金が単純に残っていない。
2)フェスの日が近づくまで自分の予算に余裕があるか分からないので、前もって買えない
 → 主催者はギリギリになって買ってくれるかもという望みがあり。
 → その場合天候にも大きく左右される。
3)この2年間フェスがなかったせいで、本来フェスの主流となる若者層がフェス離れしている。
4)しかもフェスのラインアップが、その若者が観たいものと少しずれている。
5)物価の高騰でチケット代が値上がりしてしまって、若者が買える値段じゃなくなってしまった。
 → ”チームチケット”なるものを発売。6枚買ったら1枚ただのパッケージ。
 → 後払いも可にした。
6)どうせ行くならイビザへ。ようやく海外へ行けるようになったので、地元フェスじゃなくて、イビザを選ぶ人が多かった。イギリスのフェスのチケットが高いので、同じ額でイビザに飛行機に乗って行けるなら、そりゃイビザを選ぶだろうと。

つまりフェスやコンサートにもちろん行きたい気持ちはあり、行ってはいるのだけど、これまで以上にシビアに選択をしているということ。普段の生活がキツいためだ。それは私も全く同じ状況だ。

フェスやコンサートが一気に戻って来て嬉しいけど、そんなに全部は行けない。発売と同時に買うチケットは選びに選び抜き、それ以外は開催直前に無事行われそうだったら買う。パンデミック前に買っていたチケットが全部キャンセルになってショックだったトラウマからまだ立ち直ってないからだ。

それ以前にアメリカのチケット会社はここで一気に損した分を取り返そうとしてか悪徳すぎて、自ら公式でダフ屋もやっているので、人気のあるアクトのチケットを法外に高くする、という大きな問題もある。つまり、どうしても観たいアーティストのチケット代に法外なチケット代を払ってしまうと、2番目くらいに観たかったコンサートのチケット代はもうお財布に残っていない。

それでふと思ったけど、今年ロラパルーザが、ドージャ・キャットが手術で休養のためキャンセルし、BTSのJ-HOPEをブッキングしてびっくりしたけど、もしかしてK-POP人気に助けてもらおうとしたのでは?と思って見たら、案の定売り切れているのは、J-HOPEが出演する日曜日の1日券だけだった。
https://www.lollapalooza.com/tickets

トラヴィス・スコットが復帰予定だった9月の米フェスがキャンセル。英米ではメジャーフェス以外はチケットが売れない問題発生中。音楽ファンが金欠だから(私も)?!

トラヴィス・スコットは人気絶頂なだけでなく、ディオールやナイキなど様々な大型のコラボまであったくらいなので、誰もが良い形で復活して欲しいと思っていると思う。しかし、個人的には今回の復活に関しては、なんとなくすっきりしないところがあった。そもそも10人の人が亡くなったフェスに関して現在どうなっているのか、いまいちよく分からない。トラヴィスは、インタビューに答え、

ビルボードアワードにも出演したけど、彼が悪いと思っているのか何なのか、見解がよく分からなくてモヤモヤする。

その中途半端な感じが影響しているのでは?と思う。個人的にはアーティストがパフォーマンス中にセキュリティにまで気をつかうのは絶対に限界があると思っているけど。単独でやればまた違うのかもしれない。

コロナ後のダメージは思っていたより複雑だ。フェスもトラヴィスの復活も、そう簡単じゃない。



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