先にフー・ファイターズのヘッドラインでレポートさせていただいたが、
https://rockinon.com/blog/nakamura/206422
5月26日ー28日に開催されたボストン・コーリングというフェスに行って来た。
初日のヘッドライナーがフー・ファイターズで、2日目がザ・ルミニアーズ、3日目の大トリがパラモア。その他にも、6年ぶりの新作を控えたクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジに、ザ・ナショナル、アラニス・モリセット、ザ・リンダ・リンダズ、ザ・フレーミング・リップス、ブリーチャーズなどが出演。
今時珍しいと言えるロックバンドが結集したフェスと言える。実はヤー・ヤー・ヤーズも出演することになっていたのだけど、カレンOが病気になって残念ながらキャンセルとなった。
今年10周年を迎えるのだけど、去年は、さらに強烈で、NINとザ・ストロークス、メタリカがヘッドライナー。メタリカがヘッドライナーの日に、4万人が集まってそれが史上最高の観客数だった。
毎年ロック寄りのラインアップで、一度行ってみたかったのだけど、今年行ってみたら駅から歩いて10分以内で、行きも帰りも交通の便も良く、安全。
会場は、なんと行くまで知らなかったのだけど、ハーバード大学の複合スポーツ施設。普段はハーバード大のアメフトや野球、ラグビー、テニス部などが使う施設がフェス会場だったのだ。ステージは4つで、メインステージは横並びにあって便利だし、観客数も多すぎないし、芝生もあって、暑すぎないし、全てが快適な素晴らしい良いフェスだった。
実は、2日目は行かなかったのだけど、初日と3日目で観たバンドのハイライトをまとめたい。
1)ザ・リンダ・リンダズが思い切り成長。
私が最後に彼女たちを観たのは、去年の10月で、ヤー・ヤー・ヤーズのツアーの前座。しかも、ジャパニーズ・ブレックファストも一緒という最高のメンツでのライブだったのだけど、それから8ヶ月。バンドとしてさらに成長していたのが驚きだった。しかしそれでいて、始まりの曲は、変わらずブルー・ハーツの”リンダリンダ”だったのも感激。それが終わると、喝采が起きて、観客がどんどん集まって来た。彼女たちの1週間前のインスタによると「日本のパンクバンド、ザ・ブルー・ハーツの”リンダリンダ”のカバーは、これまでは去年発売された日本盤のCDで独占だったけど、とうとう世界中でストリーミングできるようになりました💙💙💙」と。これからもさらに世界でこの曲が広まっていくと思う。
バンドは、「こんなに早い時間からこんなにたくさん集まってもらって嬉しい」と語っていたけど、観客としては、何よりサウンドが思い切り飛躍していたのが嬉しかった。メロディも、アレンジも、ギターサウンドも全てにおいて、過去に書いた曲でもより厚みが出ていたし、幅は広がっていた。4人の個性が順調に成長しているのが分かるライブサウンドになっていたのだ。学校に行きながらも、日本も含めた世界各国でライブを行い、彼女達のヒーローに会い、応援されて、着実に実力を上げている。
新曲のMV撮影も自分たちでコンセプトを考えて作ったそうで、ぜひ観て欲しいと言っていた。この曲では、そういう今の状況への正直な告白とも取れる、飽和状態について素直に吐き出しているようにも聴こえるので、それもまた興味深い。
しかしバンド紹介では「ドラムのミラは12歳です!」と言われた時、改めて驚いた。会場にはTシャツを着た子供達もたくさんいて、新世代にしっかりとロックの魂を伝承してくれていた。
2)クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの5年ぶり2回目のライブ
「これがこの5年でたった2回目のライブなんだ。今日は来てくれて本当にありがとう」と何度も嬉しそうに語っていたクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョシュ・ホーミ。5年ぶりと思えない彼ららしい緊迫感のある演奏を続けていた。が、曲間になると、本当に幸せそうだったし、思い切り優しくリラックスした口調だったのが印象的だった。
日本の皆さんに、どれくらい伝わっていたか分からないけど、ジョシュは、ここ何年も元奥さんでザ・ディスティラーズのブロディ・ダリーと、3人の子供達、それと奥さんの今のパートナーも巻き込んで、かなり激しい親権争いを繰り広げていた。それに関してジョシュはコメントしてなかったのだけど、一応解決に向かったようで、今年の3月になって初めて代理人を通して事情を説明する長文のステイトメントを発表した。
それを待ってのステージ復帰であり、6年ぶりの新作『In Times New Roman…』となったのかまでは分からないけど。ジョシュは、すっきりとしてカッコ良さが増していて、心身ともにステージに立つ準備は整っているという感じだった。
この日はフェスということもあり、「古い曲と新しい曲どっちがいい?」と観客に聞いたりしながら、両方ともに大きな拍手が起きたので、「じゃあ両方やろう」と、”The Lost Art of Keeping a Secret”から、”Go With the Flow”, “No One Knows”など人気の曲を次々に演奏し、”Make It Wit Chu”では大合唱を巻き起こした。
さらに、この日はすでに発表されている新作からの新曲”Emotion Sickness”をパフォーマンス。
またなんと初めて”Negative Space”も披露したので大盛り上がり。新作への期待も高まっていた。
https://youtu.be/HqLai4ZjV5M
最後は、”A Song for the Dead”で「踊りまくるならここだぞ」と言って彼ららしい強烈なグルーヴも不協和音も存分に響かせ、会場を激しくかき回してライブを終えた。QOTSAのギターが鳴りまくる最高のライブで帰還を告げた。
3)初のヘッドライナーにして大トリに感激のパラモア
QOTSA同様に、前作から6年も空いてしまったパラモア。ヘイリー・ウィリアムスがソロ作を出したりしていたので、『This Is Why』が”復活”作のような印象になっている彼女達。その間に、ビリー・アイリッシュからオリヴィア・ロドリゴなどの新世代スーパースター達から絶大な指示を受ける他、今年最大と言えるテイラー・スウィフトの『The Eras』ツアーでもその開幕に前座を務めるなどして、再び旬を迎えているとすら言える存在だ。すでに、その他のフェスでもヘッドラインを務めていて、音楽シーンに祝福されて”復活”している感がある。
本人達は、「自分たちがまさかフェスでヘッドラインを務められるバンドになるとは思ってもみなかった」と謙虚に語り、だから人気の曲も惜しみなく演奏し、紙吹雪などの演出も多用して、全てを出し切ってこの舞台を盛り上げようという意気込みがあった。また彼女も離婚したので、「この数年はソープドラマを見せてしまったけど、こうして戻ってこれて嬉しい」とも語り、精神的にも心機一転で吹っ切れたという感じもあった。
長年のファンならお馴染みだけど、ファンをステージに上げて歌う場面もあり、そこで登場した学校の先生が最高すぎて、それも大盛り上がり。
また、この大舞台に彼女が、中絶の権利を覆した「最高裁を中絶せよ(阻止せよ)」と書いたTシャツに白いショートパンツを履いて、それがまるで下着が見えているかのようにわざと足を開いていたのがカッコ良かった。ビリーにも、オリヴィアにも、もちろんテイラーにもない、エッジに立っているような危険さやヒリヒリ感が、伝統的なロックボーカリストを観たように思えて何より最高だった。
フェスの初日は、フーファイがトリだったので、年配の男性などもかなり多かったのだけど、この日は、ロックンロールな若い女子がたくさん来ていたのも嬉しかった。さらに最後を締めくくった曲が最新作からの”This Is Why”で攻めの終わり方だったのも完璧。彼女達は、この後、NYのマディソン・スクエア・ガーデンで2日もライブを行っている。
4)サマソニに出演のナイル・ホーラン
実は私は、フーファイのステージにすでに待機していたので観られなかったサマーソニックに出演のナイル・ホーラン。
フーファイのデイヴ・グロールがステージで、「ナイル・ホーランの観客の歓声が凄すぎてびびった」と言っていたほどの盛り上がりだったようだ。
この日のセットリストはこんな感じだったようだ。
1. Nice to Meet Ya
2. Heaven
3. On a Night Like Tonight
4. This Town
5. Too Much to Ask
6. The Show
7. Story of My Life (One Direction cover)
8. Cross Your Mind
9. If You Leave Me
10. Black and White
11. Save My Life
12. Meltdown
13. Slow Hands
また2日目は行かなかったので観られなかったザ・ルミニアーズや、ザ・フレーミング・リップス。
プロデューサーとしての方が有名だけど、ジャック・アントノフのザ・ブリーチャーズはどこまでも高揚感に次ぐ高揚感だった。
ひと昔前のUSシーンをキチッと再現してくれたようなザ・ウォークメン。ちょうどいいあんばいで時間が経過して新鮮に響いたのが興味深かった。
最後は、フジロックに出演のアラニス・モリセット。
彼女も2日目だったので観られなかったのだけど、フーファイのテイラー・ホーキンス追悼で出演した際は、1曲なのに会場を一瞬でまとめ上げてしあったカリスマ性に驚いた。
この日のセットリストは以下の通り。
1. All I Really Want
2. Hand in My Pocket
3. Right Through You
4. You Learn
5. Forgiven
6. Mary Jane
7. Reasons I Drink
8. Head Over Feet
9. Ablaze
10. Perfect
11. Wake Up
12. Not the Doctor
13. Ironic
14. Smiling
15. You Oughta Know
16. Your House
17. Uninvited
コーチェラも、ロラパルーザも、NYのフェスもポップ、ヒップホップのアーティストがヘッドラインを飾るので、若者主体のフェスとなるけど、このフェスはロック主体で、だから人種的には白人が99%という感じだったけど、年齢層の幅がグッと広がっていたのが良かった。年配の人達も多いし、家族連れも多かったのも良かった。去年は最大の4万人を集めたということだし、今年10年目を祝って、今後もこの手法で成功していくのではないかと思う。
観客数が、コーチェラなどの半分以下ということもあり、スクリーンなどもあんなに巨大ではないけど、でも超高画質だし、サウンドシステムも良いので、どんなに後に座っても、ものすごい臨場感も味わえる。フェスや、スタジアムライブなどはコンサート技術の進化に大きく助けられているなとつくづく思う。またラインアップが良かったらぜひ行きたい。
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