パラモアの紅一点ボーカルとしておなじみのヘイリー・ウィリアムス。本作は、彼女がデビュー15周年の年にリリースした、待望の1stソロ・アルバムである。パラモアのメンバーも数名参加してはいるけど(特にギターのテイラー・ヨークはプロデュースを担当)、サウンド的には、ここへ来て「脱パラモア化」が急速に進行。ダークなエレクトロ調だったり、R&Bビートを導入した曲だったりと、より実験的で、より予測不可能なオルタナ・ポップ・ワールドが全15曲で展開していく。
歌詞の面においても、パラモア時代と比べると、自らの感情をより大胆にさらけ出した曲がずらりと並んでいる。“デッド・ホース”では、離婚の原因(彼女はニュー・ファウンド・グローリーのチャド・ギルバートと17年に離婚した)にもなった自らの不倫歴を告白。相当キワどいテーマだけど、今のヘイリーは、そんな黒歴史へも容赦なく、勇敢に切り込めるようになった。
このアルバムの題名でもある『ペタルス・フォー・アーマー』は、オープニング曲“シマー”の歌詞中にも登場するフレーズで、意訳すると「花びらで作った鎧(よろい)」という意味。その詩的なイメージのとおり、本作には「花」や「植物」をモチーフとした歌詞世界が数多く登場する。その先に浮かび上がるのは、「フェミニティ(大人の女性らしさ)」というテーマだ。中でも象徴的なのは、ボーイジーニアスの3人をゲストに迎えた“ローゼズ”で、そこでは4種の花が咲き誇る庭のイメージから、女性たちの連帯が讃えられていく……2005年のデビュー時にはやんちゃなエモ・ガールだったヘイリーも、今はもう31歳。重ねてきた傷の数だけ、今の彼女は、優しく、そして本当に強くなった。 (内瀬戸久司)
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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
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