レッチリ、3年間のスタジアムツアーとパリオリンピック閉会式まで撮り続けたカメラマン、デヴィッド・ムシュゲインが特別フォトジャーナルを寄稿してくれた。最後の1枚を撮った瞬間にカメラが壊れたそう。

pic by DAVID MUSHEGAIN

レッド・ホット・チリ・ペッパーズがパリオリンピック閉会式で、次回の開催地であるLAオリンピックを象徴する完璧すぎるライブをしたのも記憶に新しいと思う。
https://rockinon.com/blog/nakamura/210271

以前も、来日の前に一度紹介させてもらったレッチリのライブを長年撮り続けているカメラマンのデヴィッド・ムシュゲイン。
https://rockinon.com/blog/nakamura/209429

今回は、なんとこのウェブサイト用に特別に、ツアー終盤の写真とパリオリンピック閉会式のリハーサルの模様を撮った写真、そして特に思い出に残っている写真について寄稿してくれた。

デヴィッドは、上の記事の中でも書いているけど、マネージャーを通してレッチリ と知り合い、とりわけアンソニー・キーディスとは長年の親友。レッチリのツアー写真は、2011年から撮り続けている。今回も、バンド初の”世界スタジアムツアー”を開始した2022年6月から最終日2024年7月30日まで、計119公演を数回のぞいてほぼ撮り続け、なんと計「100万枚は撮った」とのこと。使っていたカメラは、Nikon D6 3台、Nikon Z9、Nikon 5D。また、何台かコンパクトカメラ、Sony RX100、それからMark 1など。製造中止になった時にカメラ屋で安く売っていたので、25台は買った、と。

100万枚の写真の中から、今回はツアー終盤の写真と、この記念すべきツアーの最後の3日間の前座だったおとぼけビ〜バ〜との写真、そしてパリオリンピック閉会式でのライブのリハーサルの模様などの写真を特別に掲載許可してくれた。最後の1枚を撮った瞬間にカメラが壊れたという思い出も綴ってくれた。

以下、時系列順に紹介したいと思う。来日の熱狂を思い出しつつ、この夏の終わりの良い締め括りにもなるのではないかと思う。まずデヴィッドからの言葉を紹介したい。

はじめに。

「今回のツアーは本当に長かったから、バンドのメンバー全員がどれだけ懸命で、どれだけ毎晩ファンのために全てを出し尽くすのか見られて本当に最高だった。音楽は彼らにとっては全てだから、彼らの音楽に参加するために来てくれた人達全員に敬意を払っていたし、彼らにとってそれ以上に最高のこともなかったんだ。

今回ツアーに同行したことで、彼らがどれだけそれを大事に思っているのか、どれだけ情熱を持っているのかも目撃することができた。だから、他のバンドのツアーに同行して同じように写真が撮れるか分からない。一緒に過ごす時間は莫大だし、自分がやらなくてはいけないこともあるし、つまり、バンドと完璧なバランスでの相性が大事で、それがなかったらできないと思うから。

この3年間で、僕らは世界を2周した。その過程で、素晴らしい人達に出会い、素晴らしい場所を訪れた。だけど、そのツアーの最後に、バンドが、僕が生まれた場所でもあり、みんなが愛する街ロサンジェルスに、オリンピックをもたらすのを観られるなんて、それ以上完璧なこともないと思った。

ライブの写真を撮るのは本当に難しい。照明は変わり続けるし、バンドや観客の邪魔にならないで、完璧な角度からその瞬間を捉えるためには、色々と考えないといけないから。

運が良かったような時もあるけど、最終的には、彼らの音楽のフローとショーのエネルギーを把握するのが肝心だった。それは無理やりできることでもないし、日によっては上手くいかないこともあった。でも大体はグルーヴに乗れたから、写真も撮れた。ただ簡単ではなかったから、体にも心にも影響を与えた。だけど、彼らを記録に残せて本当に恵まれたと思っている。彼らは音楽の歴史の中でも重要な位置を占めていると思うし、彼らの重要さやレガシーはこれららもっと輝き続けると思うから。

今回はその中から何枚かの写真をみんなとシェアしたいと思う」

最後に撮った写真について語ってくれているので、それは引き続きその写真の下で読んでください。

2024年6月2日 カリフォルニア州ウィートランド
pic by DAVID MUSHEGAIN
6月15日 テネシー州ボナルーフェスティバル
pic by DAVID MUSHEGAIN
7月2日ペンシルバニア州バーゲッツタウン
pic by DAVID MUSHEGAIN
7月15日カナダ、トロント
pic by DAVID MUSHEGAIN
pic by DAVID MUSHEGAIN
7月17日カナダ、トロント2日目
pic by DAVID MUSHEGAIN
ツアー最終日7月30日ミズーリ州メリーランド・ハイツ(セントルイス郊外)
pic by DAVID MUSHEGAIN
pic by DAVID MUSHEGAIN

「この写真について、語りたいことがあるんだ。
これは、このツアーの最後に撮った写真。
2024年7月30日、ミズーリ州セントルイスで。
”Give It Away”の時に、フリーはいつもショーの最後の音でジャンプするんだ。
だから僕は、チャドとフリーの間、つまりドラムとアンプの間から、フリーがこのツアーで最後にジャンプする写真を撮った。

それでこの写真を撮った瞬間に、カメラのレンズのガラスが落ちたんだ。

作り話じゃない。なんでガラスが落ちてしまったのかもよく分からない。
そんな風にレンズを壊したこともこれまで一度もなかったから。
そのタイミングが何とも驚きだったんだ。
その時、もうみんな疲弊していたけど、でもみんなツアーの終わりに持っていたもの全てを出し切ろうとしていた。
それで僕も、最後の瞬間を絶対に捉えなくてはいけないといけないと思っていて、そのライブの最後の一音でそれが撮れた瞬間にレンズが壊れたんだ。
何が起きたのか自分でもよく分からなかった。
この写真の背景で観客が持っているサインも大好きなんだ(「RHCP SAVED MY LIFE」=レッチリが命を救ってくれた)」

7月25日インディアナ州ノーブルズビル
pic by DAVID MUSHEGAIN

「おとぼけビ〜バ〜が何日かツアーに参加してくれた。彼女達のエネルギーが最高で、バンドは彼女達が大好きだった」

犬を抱っこしているアンソニーがかわいい。

バンドのインスタをフォローしていた人は分かると思うけど、バンドが各地でレスキューの犬と一緒に写真を撮っていた。これはバンドとライブネーションが企画したことで、各地のシェルターがライブ会場に犬を連れて来て、デヴィッドが写真を撮り、ソーシャルメディアで紹介。デヴィッドの知る限りでは、紹介した全ての犬の引き取り先が決まったそう。子猫がいることがあったし、ある会場では、ヤギもアヒルも鶏も馬もいたこともあったと。

バンドはみんな動物が大好きだから、おかげでバックステージがものすごく和んだと。バンドとしてはレッチリがソーシャルメディアを使って動物のレスキューなどを手助けしたはじめてのバンドのひとつ。私の知る限りではビリー・アイリッシュもよくやっている。

パリオリンピック閉会式、ロサンゼルス引き継ぎライブのリハーサル風景
pic by DAVID MUSHEGAIN
pic by DAVID MUSHEGAIN
pic by DAVID MUSHEGAIN
pic by DAVID MUSHEGAIN
pic by DAVID MUSHEGAIN

デヴィッドにこのツアーを撮影してカメラマンとして学んだことを聞いた。

「写真を撮るたびに、写真と自分について新しいことを学ぶ。大袈裟に言っているのではなくて。本当に、カメラを持って、彼らのショーに行くたびに何か学ぶんだ。ライブ写真を撮るためには、照明やセットについて覚えていないといけないし、それが変わる度に一瞬でカメラの設定も変えないといけない。だからオートフォーカスなど、色んな技術を学ぶ。最後のライブまで学ぶことがあったし、1年前には知らなくて残念だったことについても考えていた。でもそれが写真ってもので、人生なんだと思う」

最後に、3年もバンドとツアーを一緒に周って、この後どうするのか。

「ツアーが終わったから、モデルのStella MaxwellとミュージシャンのCharlotte Lawrenceと一緒にやっている犬のグッズPeroperoに力を入れたい。”ペロペロ”は日本語だからなんかつながりがあるね。
https://myperopero.com/

それから前回日本でやった写真展の時にレッチリのタイダイのTシャツも売ったから覚えている人もいるかもしれないけど、そのブランドFreaktopia をMikioとPhilとカメラマンのクレイグ・マックディーンと一緒にやっていてそれも頑張ってやりたいと思う」

https://freaktopiausa.com/

「僕は写真を25年間撮り続けているけど、まだ人に見せたことがない写真がすごくたくさんあるから、その整理をして写真展もしたい。それから、一番大事なことは、これからも毎日写真を撮り続けること。

どうもありがとう。
デヴィッド」


こちらこそ、素敵な写真を紹介してくれてありがとうございます!
レッチリ のメンバーの今後も気になるけど、またどこかで素敵な写真を紹介してください!



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