塚本晋也監督最新作、Coccoの演技が絶賛:トロント映画祭その9

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塚本晋也監督の最新作『KOTOKO』がトロント映画祭で上映され、主演のCoccoの演技力に会場から絶賛の声が上がっていた。


映画上映後、会場からは大きな拍手が贈られたが、その後行われたQ&Aでは、Coccoに関する質問が次々に飛んだ。以下Q&Aの要約。


●Coccoは日本では有名なシンガーということですが、今回彼女を起用した理由は何だったのでしょうか?
「ずっと前から、シンガーソングライターとしてCoccoさんの大ファンで、彼女の歌が非常に好きで、ずっと長いこと一緒に映画を作りたいなあと思っていたんです。それで、ちょうど去年の7月に7年介護した僕の母親が亡くなった後に、Coccoさんが現れて、『今映画を作ろう』と言ってくれたので、Coccoさんの内面に迫るようなインタビューを繰り返して、それを元に脚本を書き上げたんです」


●Coccoはシンガーということですが、映画の中で彼女が歌うシーンが長回しの1カットで撮られていて素晴らしいと思いました。どのように撮影したのですか?
「Coccoさんはシンガーなので、ミュージック・ビデオのように、彼女の歌に合わせてカット割りするという方法もあったのですが、僕はこの映画では敢えてそれはせずに、Coccoさんの存在と歌をどかーんと見せたいと思ったのです。カメラが1台しかなかったという理由もあるのですが、だから1カットで撮影しました。歌を歌っているシーンでカット割りしたシーンはひとつもありません」


●1テイクだったのでしょうか?
「2テイクだったと思います。でも1カットです」


●彼女の演技は本当に素晴らしかったと思うのですが、主演女優の候補は他にもいたのですか?オーディションの結果選ばれたのでしょうか?
「他の人は全然考えていなかったです」


●幻覚を描くシーンが素晴らしかったと思いますが、どのようなリサーチが行われたのですか?
「この映画では、とにかくCoccoさんに近付いて内面に入っていくというリサーチがひたすらしたかったので、彼女の話からでてきたことを元に脚本を書きました。だからふたつ見えるというのも、Coccoさんが『私にはふたつ見える』と言ったので、そこから膨らませて話を作りました。もちろん、彼女には悪いのと良いのが見えているわけではなくて、それは僕の創作だったわけですが、基本的にはCoccoさんから聞いた話を並べて、そこに僕が映画としてのテーマと意味を見付けていきました。だから、すべてはCoccoさんの内側から出て来たものからできていったのです」


●日本で起きた地震がこの映画の撮影にどのように影響したのでしょうか?
「日本では撮影が無事終わりますようにと撮影前にお参りをするのですが、ちょうどそのお参りに行く日に地震が来てしまったんですね。それで、撮影は一時的にできなくなりました。というのも、この作品には、子供がたくさん出ていて、お母さん達が放射能の影響を非常に心配したのです。それを考えても無理でしたし、また照明を使って撮影するにしても、電気が使えなかったので、撮影はしばらくはできないなあと思っていたのです。ただ、映画を観ていただければ分かるように、子供を心配しているお母さん達の姿が、KOTOKOとだぶって、今だからこそ切実な映画ができるなあと思ったし、子供のことを心配しているお母さんにも共感してもらえるのではないかなあと思って作りました」


●私はあなたの大ファンなのですが、この作品は本当に素晴らしいと思いました。これまでのあなたの作品のほとんどは、都市と人間の愛憎関係について描かれてきましたが、この映画では方向転換していますよね。その理由は何だったのですか?
「確かに僕は都市と人間の関係を色々な方法でずっと描いてきました。だけど、ちょうどこの前に作った『鉄男THE BULLET MAN』でそれもだいたいやり尽くしたなあと思っていて、この次は新しいものを作りたいなあとちょうど思っていたのです。だから、この作品がその一作目ということになります」
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