ローリング・ストーン誌が選ぶ2013年の映画ベスト10!!!

ローリング・ストーン誌が選ぶ2013年の映画ベスト10!!!

『ローリング・ストーン』誌のピーター・トラバースが2013年の映画ベスト10を選んでいます。個人的には、3位に入っているマーティン・スコセッシ監督『ウルフ・オブ・ウォールストリート』以外の作品はすべて観ていて、賛成と言えば賛成ですが、同時に、ここに選ばれた作品は、すべて甲乙付けがたいくらいそれぞれに素晴らしい作品ばかり。なので順位は必ずしも賛成ではないです。どちらにしても、今年はトロント映画祭の時にも感じましたが、去年にも増して良い作品ばかりなので、アカデミー賞は混戦すると思います。実際現在アメリカ各都市の批評家賞が発表中ですが、大混戦中です。ただし、『12 Years A Slave』だけは、作品の完成度として頭ひとつ抜けているような気もします。

作品についてひとつずつご紹介せねばという状況なのですが遅れていてすいません!

というわけでピーター・トラバース先生の一言。
「ここ数年で間違いなく最も勢いがあり刺激的な作品ばかりが公開された年。2013年は、映画の限界が広げられた年だった」と。

ちなみに、『ローリング・ストーン』誌はアルバム50枚の選出の時も同様のことを書いていました。つまり、見方によっては、音楽も映画も、思いきり勢いのある作品が大量に発表された年だったと言えます。皆さん付いて来てますでしょうか! どんどん音楽聴いて、どんどん映画を観てください。どこから手をつければ良いのか分からないという方々、以下がひとつの例です。日本で公開中、間近な作品もありますので、さっそく劇場へ!!!全部マジで素晴らしい作品ばかりですので。
http://www.rollingstone.com/movies/lists/10-best-movies-of-2013-20131210


1。『12 Years A Slave』(日本公開2014年3月7日)スティーヴ・マックイーン監督、キウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ出演。

とにかく映画としての完成度が高すぎて、圧巻としか言いようがない作品。とにかく観た人達が圧倒されています。オスカー最有力候補。主役と、マイケル・ファスベンダーの演技が凄まじいんだけど、脇役で出ているベネディクト・カンバーバッチも本当に難しい複雑な役を見事なニュアンスを表現して演じていて、いかに彼が素晴らしい役者なのかを見せつけてくれます。実は彼は『AUGUST』という超豪華アンサンブル劇に出ているのですが、そちらの役ではもう胸がきゅんとするくらい思いっきりチャーミングです。脇役ですが、カンバーバッチファンは2本とも必見です。

2。『ゼロ・グラビティ』(日本公開12月13日!今週末です。全員観に行って下さい)アルフォンソ・キュアロン監督、サンドラ・ブロック主演。

全米批評家大絶賛のみならず、大ヒット。あまりに宇宙の映像がきれいで3Dの常識を変えたと言われている作品。デヴィッド・フィンチャーとジェームス・キャメロンに技術的なことを相談に言ったら、「そんな技術はまだないからその技術が生まれるまで待て」と言われた作品。実際4年待って、自分達で開発したそうです。しかし、その中で演じる俳優達がいかに大変だったか!!!最新号の『カット』にインタビューを掲載しているので、ぜひぜひ読んでください。

個人的には、観終わった後、絶対行きたくないけど、もし宇宙飛行士になって宇宙に行くことになったら絶対ジョージ・クルーニーと一緒がいいと思いました(笑)。理由は観れば分かります。

私がトロント映画祭で観た時は、あのデヴィッド・ボウイを宇宙でカヴァーしたカナダの英雄Chris Hadfieldが来ていて、「一体どうやってこんなに美しく再現できたのか想像もつかない」と大感動していました。彼はまた宇宙に行く機会があったらサンドラ・ブロックと行きたいと言っていました(笑)。

3。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(日本公開2014年1月31日)マーティン・スコセッシ監督。レオナルド・ディカプリオ主演。

まだ観てないので何とも言えないのですが、金融業界で犯罪をした実在の人物をモデルにした話。この実在の人の記事をこないだ読んだら本当にすごい人生すぎて、どこかコミカルですらあるので、笑える作品になっているのではないかと期待! 実在の人物が書いた本は大ベストセラーになっていてその日本語タイトルも『ウォール街狂乱日記―「狼」と呼ばれた私のヤバすぎる人生』だそうです。あまりに話が上手いらしくて、捕まったのに釈放されて、演説を教える人として検事側に雇われているくらいなんです。

4。『ビフォア・ミッドナイト』(日本公開2014年1月18日)リチャード・リンクレーター監督。イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー主演。

言わずと知れた『恋人までの距離』『ビフォラ・サンセット』に続く3作目。過去の2作が好きだったファンを絶対に裏切らない作品なので安心して下さい。巷では過去最高とまでは言われています。個人的には、突っ込み入れたいところはたくさんあったのですが、イーサンの役が「真実の愛」について語る場面があって、そこに全部もっていかれました。あれは、9年ずつ間をおいて3作作った人じゃないと言えない台詞&説得力だと思いました。突っ込みどころについては、皆さん観た後に語り合いたいくらいです。色々と語りたくなる映画なのです。

5。『her』(日本来年公開)スパイク・ジョーンズ監督。ホワキン・フェニックス主演。

個人的には何度も推してきていますが、実際観て、もう文句なしに最っ高の作品。今年のアメリカ映画の特徴というのは、実は、キーワードが「サバイバル」なのですが、スパイク・ジョーンズはそんな中で、本当に独自のセンスで、この独自の世界観を完璧に作り上げてみせた。これが実はスパイク・ジョーンズが自ら脚本も手がけて監督もした最初の作品になります。それをラブ・ストーリーにした、というところにすでに胸が締め付けられます。実際、観ている間中、スクリーンを抱きしめたくなるような作品でした! 抱きしめたい人がいる人は絶対一緒に行って下さい(笑)。という、どうでもいいそんな個人的な感想よりも、現在アメリカで発表されている各都市批評家賞で、混戦しているにも関わらずかなり高成績を獲得中です!

6。『アメリカン・ハッスル』(日本2014年1月31日公開)デヴィッド・O・ラッセル監督。クリスチャン・ベール、ジェニファー・ローレンス、エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、ブラッドリー・クーパー。

実際起きた犯罪を元にした映画なのだけど、デヴィッド・O・ラッセルの腕にかかったら、これが思いきりグルービーでセクシーでスリリングな人間物語になっていて、それを演じてみせたアンサンブルキャストが本当に見事! ビール腹のクリスチャン・ベールから、胸の谷間がセクシーなエイミー・アダムス。出てくるシーンすべてを持っていってしまう、ゴージャスなだけじゃなくてマジ演技力が抜群のジェニファー・ローレンス。その女っぷりに女も惚れるかっこよさ! とにかく役者が揃っているので、事件がここまでドラマに膨らませたんだろうなあという映画。

7。『キャプテン・フィリップ』(日本11月29日公開。観てない人至急!)ポール・グリーングラス監督。トム・ハンクス主演。最後の10分間が圧巻なのですが、その場で思いついて、その船に乗っていた本当の医者を使って撮影したそう。ポール・グリーングラスは、一般の人をそうやって使うのが本当に上手いというのみならず、脚本もなかったのに、その場であのシーンを演じてみせたトム・ハンクスさすが!!!!

8。『ネブラスカふたつの心をつなぐ旅』(日本2014年3月14日)アレキサンダー・ペイン監督。ブルース・ダーン主演。

出ている役者が全員素晴らしいのですが、中でもブルース・ダーンの演技が素晴らしすぎ。何かもう胸に沁みる沁みる。彼も主演男優賞候補。獲らなかったとしても素晴らしいことに変わりなし。この映画は、いつものペイン作のように、思いきり笑えると同時に泣ける、というのが満載なんだけど、この作品はここ最近のペイン作の中でもそれがずば抜けて良い。年を取ることと向き合っているので、色々と考えたり、だから心に突き刺さる場面もありつつ、最終的には希望があって、何より誰もが愛さずにいられない作品。

9。『ブルー・ジャスミン』(日本公開2014年5月予定)ウディ・アレン監督。ケイト・ブランシェット主演。

アメリカで絶賛のみならず、アレン作の中でも、記録的な大ヒット。ケイト・ブランシェットは現時点では主演女優賞最有力候補。ケイト・ブランシェットの演技が素晴らしくなかったことないんだけど、この作品はその中でもぴか一。ここ数年、ヨーロッパの新鮮な空気を吸って活き活きとした作品を作ってきたウディ・アレンですが、この作品はアメリカでしか作れなかったというダークコメディでこれが最高! ケイト・ブランシェットの皮肉がとりわけNYに住んでる人達にとってはいちいち笑える。彼女は、元NASDAQ会長にして史上最大の巨額詐欺事件犯人バーナード・マドフの妻を彷彿とさせる役。つまり、超大金持ちだったのが、いきなり貧乏になって貧乏な妹の家に厄介になるところから始まる。

10。『Inside Llewyn Davis』コーエン兄弟監督。オスカー・アイザック、キャリー・マリガン、ジャスティン・ティンバーレイク主演。

60年代のNYフォーク・シーンを舞台にした売れないフォークシンガーの物語。ボブ・ディラン役も少し出て来るのですが、主役のオスカー・アイザックが演じるのは、つまり、ボブ・ディランになれなかった人の話。コーエン兄弟曰く「だって成功する人の物語はもう数えきれないほど作られているから。僕らが描きたいのは、どこにも辿り着かない人の物語なんだ」ということで、この映画は本当に本当にたまらなく好きになる映画です。この主役のシンガーが、もう売れない、そういう意味ではルーザーで、ダメ男で、しかしキャリー・マリガン役しかり女の子がどうしても世話したくなるタイプの人(笑)。こういう人いるよな、みたいな。そういう意味でも絶対に憎めない映画。しかも、さすがコーエン兄弟。音楽が素晴らしい。実はこの特別ライブにも行かせてもらって、それについても報告しないといけないのですが……。

この他トラバースも言っているように今年は素晴らしい作品が多くて混戦。アカデミー賞に何らかの形で絡みそうな作品はまだまだあります。バラエティ紙もそれについて報じていて。以下がこの10本に入ってないけど、まだまだ大注目の映画。

『August: Osage County』(メリル・ストリープが凄まじい。ジュリア・ロバーツも負けずに気合いの演技)
『Dallas Buyers Club』(マシュー・マコノヘー、ジャレット・レトの演技が素晴らしい。ジャレット・レトは批評家賞を獲っているので、オスカーの可能性も高い)
『Saving Mr. Banks』(エマ・トンプソンは主演女優賞ノミネートされそう)
『All is Lost』(ロバート・レッドフォードがほとんど台詞のないひとり芝居で凄まじい演技。主演男優賞獲る可能性も大)
『Frutivale Station』、『Lee Daniels' The Butler』、『Philomena』、『Prisoners』、『Enough Said』、『Lone Survivor』、『Mendela: Long Walk to Freedom』、『Short Term 12』などなども引き続き注目!!!
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