日本、特に名古屋は昔からよく「ノリが悪い」みたいなことを言われている街で、青春時代をずっと名古屋で過ごしていた私自身も、ライブで思いっきり叫んだり飛び跳ねたりということはあまりしないタイプだった。感情を反射的に表現するのが苦手で、じっくり聴き入ってしまうのだ(でも一度火がつくともの凄いことになる人が多いから名古屋は面白いんだけど)。そんな当時の私でも、イエモンのライブではメンバーが登場しただけで「きやぁぁぁぁああああ!」って叫んでた。たぶん、アルバムを聴き始めて2年くらい経って、ようやくライブに来た!っていう高揚感もあったと思うけど、非常にウェルカムで開かれたバンドの佇まいが、会場を一瞬にして自由な空気に変えていくのがわかった。いろんな小難しいことなんかもういいじゃん、って、言葉で言うのは簡単だけど、日本のロックバンドでそれをライブで、しかもオープニングから瞬間的に体現できるバンドには、これまで出会ったことがなかったから、そりゃもう、何度でもライブに足を運びたくなる。
そして、2016年、先日の再始動ライブ。いい大人になった私は、今でもやはり叫んでしまうのだろうか、とか、ライブ前には考えていたりもしたのだけれど……やっぱり叫んでました(メンバーの名前をそれぞれ2回ずつは叫んだ気がする)。で、イエモンのライブに今も昔もある、あの解き放たれる感じって何なんだろうと思いながら、件のライブDVDを観ていたのだ。その1996年1月、今から20年前の武道館ライブでは、アンコールの最後で、まだ発売前の新曲として“JAM”がライブで初披露された時の貴重な映像を観ることができる。その曲前のMCに、その「解放感」のヒントを見つけた。新曲“JAM”がスローな曲であることを告げ、吉井は「俺は、歌う時は感情移入するからしょうがないんだけど、キミたちには、(首を傾げる仕草をして)こうなってほしくないんだ。こっから、日本のロックを変えるところなんだ。だから5年後、10年後、お客さんみんなが(この曲の)サビでガーッと手を上げているのが、すごく理想の絵です」と大真面目に言っていた。THE YELLOW MONKEYが日本のロックを変えようという意識を強く持って活動を続けてきたことを改めて知る。だからこそ、私たちは何の照れも迷いもなく“Romantist Taste”での腕振りや“悲しきASIAN BOY”の「イエッサー!」を誇らしげにやることができたのだ。音楽で日本の恥の文化を払拭する、なんて言ったら大袈裟かもしれないけど、少なくともイエモンのライブには、「恥ずかしい」と思う気持ちが浮かび上がる隙がない。スタイリッシュなのに時々コミカルなステージアクションや下ネタトークも含め、すべてが「解放」に向かっている。今回の再始動でも、その「解放」のエネルギーを存分に、むしろ当時以上に受け取ることができた。きっと、この後に続くライブでも、その解放のエネルギーは高まっていくに違いない。(杉浦美恵)
発売中
XT-3262-65
【TOUR’96“FOR SEASON”at 日本武道館 (1996.1.12)】
1.Romantist Taste
2.Sweet & Sweet
3.Love Communication
4.Chelsea Girl
5.See-Saw Girl
6.I Love You Baby
7.TACTICS
8.Love Sauce
9.ピリオドの雨
10.審美眼ブギ
11.This Is For You
12.イエ・イエ・コスメティック・ラヴ
13.ROCK STAR
14.Four Seasons
15.赤裸々GO!GO!GO!
16.SUCK OF LIFE
17.Father
18.空の青と本当の気持ち
19.太陽が燃えている
20.“I”
21.悲しきASIAN BOY
22.アバンギャルドで行こうよ
23.JAM
【TOUR’96 FOR SEASON“野性の証明”at NHKホール (1996.7.21)】
1.SPARK
2.Chelsea Girl
3.See-Saw Girl
4.I Love You Baby
5.TACTICS
6.Love Sauce
7.天国旅行
8.Four Seasons
9.熱帯夜
10.ROCK STAR
11.Sweet & Sweet
12.赤裸々GO!GO!GO!
13.嘆くなり我が夜のFantasy
14.空の青と本当の気持ち
15.太陽が燃えている
16.Love Communication
17.MOONLIGHT DRIVE
18.SUCK OF LIFE
19.JAM
【BONUS DISC】
1.ツアーオフショット&メンバーインタビュー