5月17日にリリースした1stアルバム『ミカヅキの航海』がオリコンデイリー1位を記録。そして5月19日の新宿駅前での約1年3ヵ月ぶりの路上ライブでは約2000人のファンを集めるなど、大躍進を遂げているシンガー・さユり。
その歌が今、多くの人の心の深いところを掴むのは、彼女が「死にたい」と「生きたい」の間を揺れながら自分の中にある本当の声を絞り出して歌うからだ。
そんな今、さユりが聴き手に伝えたいことのすべてが注ぎ込まれた名曲がアルバムのラストを飾る“birthday song”。
十代の最後に、彼女はこの楽曲で何を歌いきったのか。
《死のうと思って止めたあとの/死ねずに吸い込んだこの息で/私は歌を歌っている》
2コーラス目のあと、まくし立てるように歌う部分で彼女はこう歌う。
「死にたい」自分とまともに向き合ったから出会えた「生きたい」自分として、さユりは、「生きたくても生きられない」誰かにも「死にたくても死にきれない」誰かにも同じように正直に歌えるようになった。
そして、この曲が生まれたことによって、欠けたものを抱きしめながら願いを放つと歌う“ミカヅキ”も、君の苦しみを切り裂ける光になりたいと歌う“平行線”も、生まれたままの姿でいいと歌う“オッドアイ”も、より圧倒的な説得力を持つようになった。
これからもっともっと多くの人に聴かれることになっていくであろう『ミカヅキの航海』を聴きながら、そのメッセージで繋がった彼女と聴き手たちとの物語の行く末を楽しみにしたい。(古河晋)