「僕は音楽ナードだし、音楽の歴史は全て知ってるつもりでいたから(笑)、知らないなんてありえないってね。それで映像を観て開いた口が塞がらなかった。なんでこれが50 年間も忘れられていたんだ?ってね」
1969年に、時代を象徴するフェスティバル“ウッドストック”が行われたが、その同じ年のわずか数週間前に、NYハーレムのマウント・モリス公園で、スライ&ザ・ファミリー・ストーン、B.B.キング、スティーヴィー・ワンダー、ニーナ・シモンなどそうそうたるメンツが出演した“ハーレム・カルチュラル・フェスティバル”が開催された。しかも30万人も集まったのに、これまで50年以上歴史から抹消されてきたのだ。それをザ・ルーツのドラマー、アミール・“クエストラヴ”・トンプソンが初監督し、今年のサンダンス映画祭で『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放送されなかった時)』として上映。大賞を2つ(ドキュメンタリー部門審査員大賞、観客賞)も受賞し、現在批評家からも絶賛されている。当時のプロデューサーは「ブラック・ウッドストック」と名付け各メディアに売り込むも誰も興味を示してくれなかったそうだ。
今作は、まず何より数々の信じられないようなパフォーマンスを観て喜びを覚え感動するのだが、さらに深く心を打つのは、コロナ禍でBLMを生きる我々の世界と重なる部分が多いことだ。筆者を含め複数メディアが出席したサンダンス映画祭とNYの記者会見での、その複雑な思いを語る監督アミールの言葉をここにまとめた。(中村明美)
『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放送されなかった時)』の記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。