ロッキング・オン最新号は、ピンク・フロイド総力特集! “プログレ全盛時代”の扉をひらいた傑作『原子心母』のすべて。「世界最強のモンスター・バンド」へ至る原点を徹底的に解き明かす

ロッキング・オン最新号は、ピンク・フロイド総力特集! “プログレ全盛時代”の扉をひらいた傑作『原子心母』のすべて。「世界最強のモンスター・バンド」へ至る原点を徹底的に解き明かす - rockin'on 2021年10月号よりrockin'on 2021年10月号より

「ウォーターズが新聞をめくっていくと、『アトム・ハート・マザー』という文字が目に入った。56歳の女性が、放射性プルトニウム電池式ペースメーカーを入れたことを報じる記事だった。
それを見てウォーターズが、『これだよ! 原子心臓の母!』と」


ピンク・フロイドの1970年の『原子心母』はロック史でも特別な作品で、ピンク・フロイドというバンドの特殊性を浮き彫りにするものだ。当初、評論家ウケは芳しくなかったし、バンドのメンバーの意見も今ではこの時期の作品についてはわりと冷ややかだ。しかし、アルバムはイギリスのチャート1位を誇る人気となり、リスナーからの支持も絶大だった。

当時の評論家筋がこの時期の作品群をあまり評価していないのは、おそらくアマチュアリズムが炸裂しているからだ。この時期、バンドは思いつきをそのまま作品化していくような実験をさまざまな楽曲で試みていて、おそらくその後ならさらに煮詰めていくようなプロセスが不足しており、どこか青臭さが残る。

しかし、ピンク・フロイドは1967年のファースト『夜明けの口笛吹き』での完璧なサイケデリック・ロックとしての世界観が絶賛されていたのに、フロイドを牽引していたシド・バレットが脱退し、68年のセカンド『神秘』からはバンドを一から作り直すというプロセスをひたすら辿っていたのだ。特にイギリスでは人気の高いバンドだったので、この時期の再出発的な試行錯誤は、ある意味でとてもDIY的なものとして共感を呼んだのだった。

さらに、バンドがこうした試みで追求していた音像が、サイケから離れてアンビエント的なものへと突き進んでいたことがリスナーの好むサウンドの趣向の変化とシンクロしていたことも、支持が大きかった理由でもあるはずだ。おそらく当時のピンク・フロイドのリスナーにとって、『神秘』以降のバンドの音の変遷と成長は、自分のリスニング趣向の変遷として共有されていたものだったのだ。

また、ピンク・フロイドは早くからライブ音響の充実に踏み込み、70年の時点ですでに他のバンドを引き離していたこともリスナーの支持に繋がっていたはずだ。そして『原子心母』とはまさにこのバンドのそんな時期の総仕上げとなっていて、次回作『おせっかい』で彼らはこれまでの試みを明確なサウンドと楽曲という形に収斂させ、打ち出していくことになる。

今回リリースされた『原子心母』の箱根アフロディーテ50周年記念盤は、新たにレストアされた1971年の箱根アフロディーテでの“原子心母”の演奏映像がひとつの話題でもある。この映像が驚異的なのは、まさにこのバンドの当時のむこうみずな姿勢と圧倒的な音の自信を50年前の事件として伝えてくれているからなのだ。 (高見展)




ピンク・フロイドの特集は、現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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