音楽史の20世紀と21世紀を繋ぐ、レディオヘッドの名盤が驚きの新装リイシュー。『キッドA』+『アムニージアック』=『キッドAムニジア』、11月に堂々リリース!

音楽史の20世紀と21世紀を繋ぐ、レディオヘッドの名盤が驚きの新装リイシュー。『キッドA』+『アムニージアック』=『キッドAムニジア』、11月に堂々リリース! - rockin'on 2021年11月号 中面rockin'on 2021年11月号 中面

ロック・バンドの在り方を21世紀に向けて更新したレディオヘッドの革新的な傑作『キッドA』および『アムニージアック』が、20周年を記念しシングルB面やレア曲等を収めたボーナス盤付きの豪華3枚組『キッドAムニジア』として新装再発されることになった(『キッドA』は21周年とはいえ、イギリスでは21歳が成人とみなされる風習が強く残っているので「大人になった」というニュアンスを感じさせる)。

先行公開された未発表曲“イフ・ユー・セイ・ザ・ワード”を聴きながら、期待を募らせている読者の方も多いと思う。

1999年から2000年にかけ、数ヶ所のスタジオを使用し16ヶ月近くにも及んだ伝説的なセッションから生まれたこれら2枚のアルバムはスピリットの面で「双子」だ。2019年の本誌取材で当時について「『OK コンピューター』を経て開け始めていた様々なドアのすべてに見合うものをやらないと、と気負いがすさまじかった」とトム・ヨークが語ったように、90年代オルタナ・ギター・ロックのアイコンのひとつの座に安住することをよしとせず、彼らはその話法を抜本的に解体しエレクトロニカや現代音楽、ジャズ他をブレンドして再構築する、苛酷なまでの試行錯誤と自問のプロセスを通じてラディカルな転生を果たした。

密度が濃く大胆なその成果を2枚組のボリュームで一気に投下するのはいささかはばかられたのだろう、2作は約8ヶ月のインターバルを挟んで個別の作品として発表された。リリース当時『キッドA』が賛否両論を呼んだことからも彼らの判断が正しかったのは裏付けられたわけだが、こうした変則的でコンセプチュアルなリリース形態はもちろん、野心的な音楽性のフュージョン〜異種交配の実験はいまや珍しくなくなった――というか、何かと規則や慣習が多く筋萎縮しがちな音楽界にはたまにこうして一見エゴイスティックとすら映る掟破りをやり他のアーティストに免罪符をもたらす存在が必要であり、レディオヘッドは期せずしてその役目を果たしたと言える。

その意味で「現代アート・ロックのゴッドファーザー」と言っても過言ではないこの2作、今回の再発は古株ファンが未発表曲群と併せて包括的に聴き直す絶好の機会であるのはもちろんのこと、未聴の若いリスナーは現在の耳で接し、そこから何を感じ取り、新たな解釈を生むのだろう?と思うと興奮してしまう。20年の歳月を経てひとつのアイデンティティを獲得した「Aちゃん」に、11月に会おう。 (坂本麻里子)




レディオヘッドの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

音楽史の20世紀と21世紀を繋ぐ、レディオヘッドの名盤が驚きの新装リイシュー。『キッドA』+『アムニージアック』=『キッドAムニジア』、11月に堂々リリース! - rockin'on 2021年11月号 右:表紙/左:表2rockin'on 2021年11月号 右:表紙/左:表2

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