ロック・バンドの在り方を21世紀に向けて更新したレディオヘッドの革新的な傑作『キッドA』および『アムニージアック』が、20周年を記念しシングルB面やレア曲等を収めたボーナス盤付きの豪華3枚組『キッドAムニジア』として新装再発されることになった(『キッドA』は21周年とはいえ、イギリスでは21歳が成人とみなされる風習が強く残っているので「大人になった」というニュアンスを感じさせる)。
先行公開された未発表曲“イフ・ユー・セイ・ザ・ワード”を聴きながら、期待を募らせている読者の方も多いと思う。
1999年から2000年にかけ、数ヶ所のスタジオを使用し16ヶ月近くにも及んだ伝説的なセッションから生まれたこれら2枚のアルバムはスピリットの面で「双子」だ。2019年の本誌取材で当時について「『OK コンピューター』を経て開け始めていた様々なドアのすべてに見合うものをやらないと、と気負いがすさまじかった」とトム・ヨークが語ったように、90年代オルタナ・ギター・ロックのアイコンのひとつの座に安住することをよしとせず、彼らはその話法を抜本的に解体しエレクトロニカや現代音楽、ジャズ他をブレンドして再構築する、苛酷なまでの試行錯誤と自問のプロセスを通じてラディカルな転生を果たした。
密度が濃く大胆なその成果を2枚組のボリュームで一気に投下するのはいささかはばかられたのだろう、2作は約8ヶ月のインターバルを挟んで個別の作品として発表された。リリース当時『キッドA』が賛否両論を呼んだことからも彼らの判断が正しかったのは裏付けられたわけだが、こうした変則的でコンセプチュアルなリリース形態はもちろん、野心的な音楽性のフュージョン〜異種交配の実験はいまや珍しくなくなった――というか、何かと規則や慣習が多く筋萎縮しがちな音楽界にはたまにこうして一見エゴイスティックとすら映る掟破りをやり他のアーティストに免罪符をもたらす存在が必要であり、レディオヘッドは期せずしてその役目を果たしたと言える。
その意味で「現代アート・ロックのゴッドファーザー」と言っても過言ではないこの2作、今回の再発は古株ファンが未発表曲群と併せて包括的に聴き直す絶好の機会であるのはもちろんのこと、未聴の若いリスナーは現在の耳で接し、そこから何を感じ取り、新たな解釈を生むのだろう?と思うと興奮してしまう。20年の歳月を経てひとつのアイデンティティを獲得した「Aちゃん」に、11月に会おう。 (坂本麻里子)
●RADIOHEADライブ上映会が開催決定
―― Twitterにて参加者募集中
11月5日の『キッドAムニジア』リリース前日、11月4日に東京はヒューマントラストシネマ渋谷、大阪はシネリーブル梅田の映画館2館でライヴ上映イベント(無料/完全招待制)の開催が決定した。
現在、BEATINKのTwitterにて参加者を募集中。当選した来場者には当日、非売品ポスターがプレゼントされる。
[イベント内容]
RADIOHEADライブ上映会
○日時
2021年11月4日(木)
※スタート時間は会場により異なる
○場所
・東京:ヒューマントラストシネマ渋谷
〒150-0002東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocotiビル 8F
TEL:03-5468-5551
・大阪:シネ・リーブル梅田
〒531-6003 大阪府大阪市北区大淀中1丁目1-88 梅田スカイビルタワー イースト 3F・4F
TEL:06-6440-5930
○上映内容 未定
*上映開始時間は決定次第ご案内
ヒューマントラスト渋谷およびシネリーブル梅田の音響システム「odessa」は、上映作品の魅力を最大限引き出すため専用開発されたカスタムメイドのスピーカー・システムで、音の輪郭はもちろん余韻まで繊細に再現できるのが特徴。こうした最高水準の音響システムでレディオヘッドのライブが映画館上映されるのは世界初となる。
○応募方法
BEATINKのTwitterアカウントの該当ツイートにて募集中
【注意事項】
※ご来場の際は、マスク着用をはじめとした新型コロナウイルス感染症予防対策へのご協力をお願いします。『新型コロナウイルス感染予防の取り組み』については下記URLをご覧ください。テアトルシネマグループ 新型コロナウイルス感染予防の取り組み
※新型コロナウイルス感染拡大の状況によって、開催日時を変更させていただく場合があります。
※イベント内容は、予告なく変更または中止になる場合あります。
■その他、混雑状況など詳細につきましては、劇場までお問い合わせ下さい。
レディオヘッドの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。