rockin'on 2022年6月号 中面今年、と言うか長年一番待っていたケンドリック・ラマーの新作『Mr. Morale & the Big Steppers』が5月13日に遂に発売される。彼自身が、4月18日にウェブサイトで発表した。オリジナル作としては2017年『ダム』から5年。その後『ブラックパンサー：ザ・アルバム』のプロデュースも手掛けているが、ここ数年は公に姿を現すこともほとんどなく秘密裏に新作の制作が行われてきた。ご存知のように2018年には、『ダム』で驚きのピュリツァー賞を受賞。その年のフジロックにボブ・ディランと並んで、ヘッドライナーだったのも、日本の皆さんの記憶に残っているはず。
しかしここまで長かった。ケンドリックは2021年、新作はTDEからの最後の作品と発表。今年2月には最強メンツでスーパーボウル・ハーフタイムショーに出演。また彼のいとこのベイビー・キームの“family ties”に参加し、4月にグラミー賞も受賞。そして今回ようやく新作の発売が発表された。続けて、彼の公式サイト（https://oklama.com/theheart）にアップされた数えきれないファイル中に「重要」と書かれたものも見つかっている。ただ4月24日現在は何も入ってない。
発表後にはコーチェラ・フェスがあり、4月22日ベイビー・キームのステージで“family ties”と“vent”でケンドリックが登場しキレキレのパフォーマンスを見せ大盛り上がりした。去年は1度だけDay N Vegasフェスにヘッドラインで出演。全キャリアを総括する内容でありつつ、バレリーナなどが登場し絵画のように美しくポエティックなステージで、彼の曲が新たな枠組みの中で紹介された。
ケンドリックは真っ白の衣装で、最後に黙祷を捧げて、「世界に平和を。これは愛のためにやっているんだ」と語ったが、そのライブで一番感動したのは、始まった瞬間から精神が高められるような体験だったこと。この混乱した世界から心を引き上げてくれるようなライブだったのだ。
それが新作の鍵か？ または以前語っていたロック寄りの作品か？ または、去年発表したステイトメントで「愛や喪失、悲しみが俺の居心地の良い場所の妨げとなったが、音楽や家族を通して神の微かな光が話しかけてきた。周りの世界は変化し続けるが、自分にとって何が一番大事なのかを考え、俺の言葉が次に到達する人生を考えた」と書いていたが、それが関係あるのか？ まるで分からない。
しかし、間もなくその全貌を知ることができる。6月にはグラストンベリーにヘッドライナーで出演。今は、5年も待った甲斐のある想像を絶する最高作が完成している以外には、考えられない。 （中村明美）
ケンドリック・ラマーの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』6月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
