追悼ウィルコ・ジョンソン ―― オルタナギタリストのゴッドファーザーへ捧ぐ

追悼ウィルコ・ジョンソン ―― オルタナギタリストのゴッドファーザーへ捧ぐ - rockin'on 2023年2月号 中面rockin'on 2023年2月号 中面

ウィルコ・ジョンソンが死んだ。享年75。

1947年に生まれたウィルコは1971年にドクター・フィールグッドを結成、1975年『ダウン・バイ・ザ・ジェティ』でデビューする。モノクロのジャケット、モノラル録音、装飾を一切排したシンプルで簡潔なブルース/R&B/ロックンロールは、今となってはごくベーシックなものに聴こえるかもしれないが、腐ったプログレやフュージョンやディスコやAORばかりが幅を利かせていた当時においては、まるで脳天をかち割られるような衝撃だった。

とりわけウィルコの切れ味抜群のリズムギターは、まるで抜き身の日本刀を突きつけられるような張り詰めた緊張感があり、異様に新しかった。当時のライブ映像がネットに転がっているのでぜひ観てほしい。むさくるしいスーツ姿の男どもがストイックなビートを叩きつけ、ウィルコが痙攣したようなステージアクションを見せる、そのカッコよさ。彼らの登場がロンドンパンク登場の導火線となったのは歴史的事実だが、ブロンディデボラ・ハリーの証言によれば英国でフィールグッズを観たブロンディのメンバーがアルバムを仲間に聴かせたところ全員がヤラれ、それからNYパンクが始まったとのことで、ウイルコこそがパンクの開祖だったのだ。

またウィルコのギターがギャング・オブ・フォーのアンディ・ギルやスティーヴ・アルビニに多大な影響を与えたこともよく知られているが、オルタナ以降のギタースタイルの基礎を作ったとも言える2人に深刻な影響を与えたということは、ウィルコはニューウェイヴ~ポストロックと連なるオルタナギタリストの系譜の大元に位置する存在でもあるということになる。

シビアに言えばウィルコの歴史的な役割は、フィールグッズ脱退で終わっている。変化を拒み自らのスタイルを頑なに守り続けたウィルコは、本来は保守的な音楽家であり、たまたま時代の巡り合わせで脚光を浴びたに過ぎないのかもしれない。だがその頑固さゆえに音楽ファンに愛され、親しまれた。そのギタープレイも佇まいも最高にカッコよかった私のヒーロー。どうか安らかに。(小野島大)



ウィルコ・ジョンソンの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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