坂本龍一が作成したサウンドトラックに、デヴィッド・シルヴィアンやカヒミ・カリィ等のナレーションが静かに混じり合う。彼の呼びかけによって世界各地で録音された音が、機械に近づくと聞こえてくる。フィールドワークで採取された生きた音の標本のように。2022年、ダムタイプに坂本龍一がメンバーとして参加し、ヴェネチア・ビエンナーレで展示された新作《2020》を再構築した帰国展がアーティゾン美術館で開催されているが、いよいよ明日が最終日。時間指定チケットも現在購入できるようですので、まだの方はお早めに。
https://www.artizon.museum/exhibition_sp/dumbtype/
国境や地政学的境界を相対化するイメージ、そこに1850年代の地理の教科書の原初的な質問が引用されているところも興味深かった。普遍性と、新しい時代のための文化やコミュニケーションを繋いできた坂本さんの音楽と深く通じ合っている。
ここにあるサウンドは、彼がこれからやろうとしてた音楽表現のその先を感じさせてくれる。
坂本龍一のそうした思想をひもとくヒントとなる2本のインタビューを、ロッキング・オン6月号(ボブ・ディラン表紙号)に16ページにわたり再録しています。インタビュアーは渋谷陽一。田島一成さんの写真も掲載させていだきました。
幼い頃の音楽体験からビートルズやロックとの出会い、ゴダールや吉本隆明など政治活動とアートとの関係なども語られた1987年『ネオ・ジオ』でのインタビュー。そして1988年『ラストエンペラー』を機に語る音楽と自己。彼が唯一無二のオリジナルであり続けたことを理解するひとつの手がかりとなると思います。ぜひ書店にて手にとってみてほしいです。(井上貴子)
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
坂本龍一のサウンドに包まれる空間――「ダムタイプ|2022: remap」は明日14日(日)まで
2023.05.13 11:50