ヴァンパイア・ウィークエンド、5年ぶり新作『オンリー・ゴッド・ワズ・アバヴ・アス』をリリース! かつてない重さと闇を内包しながら、最後は“希望”で終わる注目作を堪能せよ

ヴァンパイア・ウィークエンド、5年ぶり新作『オンリー・ゴッド・ワズ・アバヴ・アス』をリリース! かつてない重さと闇を内包しながら、最後は“希望”で終わる注目作を堪能せよ - rockin'on 2024年5月号 中面rockin'on 2024年5月号 中面

5年ぶり。ヴァンパイア・ウィークエンドの5作目『オンリー・ゴッド・ワズ・アバヴ・アス』が完成した。前作『ファーザー・オブ・ザ・ブライド』は、ロスタム・バトマングリが脱退後初の作品だったが華々しく帰還。米チャート1位獲得、グラミー賞も受賞。フジロックのヘッドライナーも飾った。

楽園的なムードとジャムサウンドが特徴だったが、そこから一転。今作は彼ららしさを失わないまま、バンドが未開の地へ大胆に深く突入した作品だ。何しろ幕開けでエズラ・クーニグは《ファック・ザ・ワールド》と歌うのだ。さらにディストーションギターが鳴り響き、過去にない重さと闇を内包している。NYタイムズでエズラは、前作の守護聖人がグレイトフル・デッドだとすると、今作は彼が見逃した「1997年レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンウータン・クランのツアー」だと語っている。「でも世界は暗くて最低と言いたいわけじゃない」。

実際今作の曲は、美しいアコギで彼ららしく始まったかと思うといきなり闇に包まれるようにノイズに乗っ取られ、しかし最後にまたアコギの美メロが顔を出す。「世界観や態度では真の大人になり、逆に遊び心や若さゆえの素人っぽさも追求した。また最も野心的なスイングにも挑戦した」とも語る。また「世界はクソだ」に始まるが、最後は“ホープ”=希望という曲で終わり、エズラ曰く「疑問を抱き、受け入れ、降伏するような。ネガティブな世界観から深いところへたどり着く旅」が描かれた作品なのだ。

ジャケ写とタイトルもそれを完璧に象徴していて、スティーヴン・シーゲルの写真に写った1988年の飛行機事故を報じた新聞に、生存者が「我々の上には神しかいなかった」と語った見出しがそのままタイトルとなっている。大惨事からの悟りとでもいうようなタイトルなのだ。それが今の我々の心境にも通じる気がする。今作は20世紀のNYに影響を受けたそうだ。つまり彼らの中学生時代まで、青春の記憶と歴史を振り返り、今が検証されている。

エズラは一時期日本に住んでいて、今作は東京、NY、LA、ロンドンでレコーディング。アリエル・レヒトシェイドと2020年より制作開始し、2012年ブルックリン時代の“ジェン・X・コップス”や当時ロスタムも手掛けた“ザ・サーファー”も収録。4月8日の皆既日食時にリリース後初ライブを行う。その日は、「若くして死ぬとは言えない歳になった」エズラの40歳の誕生日でもある。世界配信されるので彼らの再始動をお見逃しなく。 (中村明美)



ヴァンパイア・ウィークエンドの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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