ピクシーズ、3年ぶりの来日公演が決定。11月2日に大阪:GORILLA HALL OSAKA、11月4日と5日に東京:EX THEATER ROPPONGIの計3公演が行われる予定だ。彼らのようなリビングレジェンドが定期的に来日してくれるだけでも御の字だが、今回のツアーではそれだけに留まらない見どころがふたつある。
ひとつは、2024年10月にリリースされた10作目のフルアルバム『The Night The Zombies Came』の楽曲がどのように演奏されるか。同作はソングライティングと演奏共に充実し、特にギターのジョーイ・サンチャーゴの貢献が際立った力作であり、早くもライブの場で生演奏を味わうことができるのは僥倖だ。昨年のツアーのセットリストを見ると惜しみなく代表曲が並べられており、同作からそこまで多くの曲が選ばれているわけではないようだが、そんな中にも聖と邪が背中合わせに貼り付いたような“Chicken”や“Mercy Me”といった新境地を感じさせる曲がピックアップされているのは興味深い。
そしてもうひとつが、新たなベーシストとしてエマ・リチャードソンが加入した新編成でのグルーヴを確認できることだ。これについては正直、不安がないわけではない。前任のパズ・レンチャンティンが近年のピクシーズにおいてどれほど巨大な役割を担っていたかは論をまたず、特に3年前の横浜公演におけるMVPと呼んでも差支えのないような熱演が記憶に焼き付いているだけに、なおさらである。ただし、振り返れば2013年にキム・ディールが脱退した際にも、「キム・ディールのいないピクシーズなんて、ピクシーズたり得るのか?!」と不安に苛まれたものの、パズ・レンチャンティンという最良のピースで見事に穴を埋めた前例をピクシーズは有しているだけに、その再現がなされていることを期待したい。
上記の2点に共通しているのは、とにかく注目すべきはピクシーズの「今」であるということ。輝ける過去を再体験するのではなく、歩を進め続けるバンドの現在を噛み締めることにこそ意味があるということである。数ある再結成組の中で、これほど「生きた」バンドはそう多くないはず。ファン冥利に尽きるじゃないか。 (長瀬昇)
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