満員御礼! ニュー・オーダー8年ぶりの単独来日公演。熱狂の一夜を終えたメンバーに直撃した最新ロングインタビューを公開

●今までのニュー・オーダーのイメージを一新するようなサウンドでしたが、しかしそれでもニュー・オーダー以外のなにものでもない、というのが素晴らしかったと思います。あなた方の考える「ニュー・オーダーらしさ」とはなんですか。

フィル「何だろう……まずサウンド的には確かに良くなってると思うんだよ。というのも楽曲を手直しする際に、ニュー・オーダーの初期の映像や録音を確認することがあるんだけど、正直に言ってテクノロジーは飛躍的に発展しているしサウンドシステムも大幅に向上している。だから今ライブで演奏すると、言ってみればニュー・オーダーの進化版のように感じられるんじゃないかな」

トム「やっぱりバンドの精神じゃないかな。既成概念にとらわれずに考えること、ルールに縛られないという姿勢を昔からずっと大事にしてきて、それがバンドにとってプラスに働いているんじゃないかと思う。言われたことをそのままやる多くのバンドとは違って、自分たちがやりたいことをきちんとやってきたという。そしてこれからもそうなんだ」

●テクノロジーの進化が大きいという話がありましたが、打ち込みと生楽器の混ぜ方、フィジカルな部分とテクノロジーに頼る部分のバランスの取り方が非常にうまいなと思いました。そこのところはどういうことを気をつけながらやってますか?

フィル「実は結構大変で、簡単ではないんだよ(笑)。多くがコンピューター上で作られていて、ライブの場ではバンドの演奏をそこに組み入れる必要があるからね。場合によってはレコードには入っていない要素を加えることもあるから、かなりの作業が必要になる」

トム「時間もかかるしね。サウンドのレイヤーの数も相当で、1つのサウンドではないし、バーナードとスティーヴンが作り込んだシンセサイザーのレイヤーを1つずつ確認しながらレベルを合わせたり、実はかなり大掛かりな作業なんだよ」

フィル「たとえば1番下にドラムループがあって、打ち込みのビートがあって、スティーヴンの生演奏がその上にあって、次にベースシンセサイザーがあってトムが弾くベースがあって(笑)。そうやってひたすらレイヤーが積み上がっていく。キーボードがあって、ギターのレイヤーがあってさ。そのすべてを組み合わせるのは本当に大仕事なんだ。でもそれこそがニュー・オーダーのサウンドになっているわけだからね。だから時々ジョイ・ディヴィジョンの曲をやるのは実はすごく楽しい。バンド演奏だけでレイヤーがないからさ」

トム「かなり自由だよね」

フィル「いい感じでニュー・オーダーの曲と対照をなしているんだ」

※ここでバーナード登場
バーナード「遅れて申し訳ない。昨夜は時差ボケで眠れなくて」

●昨日のライブがめちゃくちゃ良くて、バンドとして進化していて、今のバンドとしてニュー・オーダーがちゃんと機能していることがわかりました。その理由というか秘密みたいなものをうかがっていたんです。

バーナード「昨日のライブはすごく良かったんじゃないかな。我々も楽しかったし、観客も最高で会場も良くて、かなり手応えを感じたよ。オーディエンスから良い反応が返ってくるというのはすごく重要で、ライブというのは7割ぐらいがバンドだとしたら残りの3割は観客が担っているからね、そういう意味でもすごく良かった。

それから進化ということでは、昔のままで止まらないように非常に努力をしているんだ。ニュー・オーダーがレトロなバンドになることは決してないよ。前を向いて、どうすれば新しくなるか、まだ人々が聴いたことがないものを作るにはどうしたらいいか、常に考えているからね。リリース当時は最先端のテクノロジーを使っていても、今となっては時代遅れになっているものもあるから、新たなサウンドを加えたり現代的なものにアップデートするために色々と手を加えている。

歌詞についても、それほど多くはないけれど単語を1つ2つ変えたりしながら改良しているしね。そうやってサウンドもアレンジもアップデートしているんだ。それからテンポも若干いじっていて、言ってみればDJのようなやり方で曲から曲へとスムーズに繋がるように、もしそのためにオリジナル曲のテンポを速める必要があればそうすることもあった。

ただし“ブルー・マンデイ”だけは例外で、あの曲はあれ以上できることがない。一通り試みたけど、あれ以上良くなりようがないんだよ。でもたとえば“ビザール・ラヴ・トライアングル”のアレンジなんかは劇的に変わっているし」

トム「“トゥルー・フェイス”も違うよね」

バーナード「そう、“トゥルー・フェイス”の映像についても、我々のビジュアル面を手掛けているウォーレン・ジャクソンが、VHSカセットに録画されていたオリジナル映像をAIで新たなバージョンにアップデートしているんだ。だからかなり鮮明な映像になっていただろ?」

●コンテンポラリーなバンドでいるために必要なこと、心掛けていることはありますか? 

バーナード「新しい機材を使うことと、それから経験と共に蓄積された自分の音楽の知識、この記憶装置を駆使することだね」

●たとえば今の新しいバンドやサウンド、映像などを常に吸収するといった努力をしているんでしょうか。

バーナード「新しいものを聴くっていう努力ではないね。年を取れば取るほど、16歳の頃に聴いていた音楽に戻っていくような感じだな(笑)」

フィル「それに今の新しいバンドにしたって結局あの時代のものを真似していたりすることが多いしね。音楽的に全部やり尽くされて一巡して、それが繰り返されているという世界に生きているからさ」

バーナード「こう言うと年寄りくさく聞こえるだろうけど(笑)、今時のポップミュージックの多くは少し浅いと言わざるを得ない。その多くが内容ではなくてイメージに基づいているように思えるんだ。一方古き良き時代は(苦笑)、もっと音楽的な価値があった。今のポップミュージックはイメージを売るためのセールストークで、たとえばディズニーのプリンセスがたくさんいて、彼女たちがいかに魅力的でセクシーかを売り込むために音楽が使われているというような。そういったものには魅力を感じないんだ」

トム「それに音楽はもはや謎に包まれていないと思う。子どもの頃に聴いていたアーティストにはどこか謎めいた部分があった。インターネットもないしそのアーティストについてもそれほど知識がないなかでは音楽がすべてであって、そこに惹きつけられたんだ。今はそれがない。すべてが入手可能になったからね」

バーナード「もちろん例外はあって、たとえばカニエ・ウェストのファーストアルバムなんかは例外として挙げられると思う。ただ残念ながら……」

フィル「彼はイカれちゃったけど(笑)」

バーナード「残念ながら彼は道を外れてしまったわけで、それはすごく残念だよ。初期はすごくいいものを作っていたからさ。とにかく例外はあるけれど、大多数は中身が欠落していると思うよ」
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