現在発売中のロッキング・オン11月号では、タイラー・ザ・クリエイターのライブレポートを掲載しています。
以下、本記事の冒頭部分より。
文=粉川しの
タイラー・ザ・クリエイターの 『CHROMAKOPIA: THE WORLD TOUR』が盛り上がっているというニュースは、これまでも度々報じられてきた。北米からヨーロッパ、オセアニア、アジアまで90以上の公演が組まれ、各地でチケットは軒並み即完売。さらに先日は、南米の日程も発表された。数万人規模の会場が埋まり、観客の多くがキーカラーであるグリーンを身につけ、音楽とファッション性を融合させた総合的な体験として語られる話題のワールドツアーである。結果、タイラーはヒップホップを超えたカルチャーアイコンとしての存在感を高め、キャリアのハイライトと呼んでいいレベルの盛り上がりを生んでいる。果たして、その熱狂は日本公演ではどのような形で繰り広げられるのか。応募が殺到し追加公演が決まったことからもその勢いは推して知るべしだが、有明アリーナに到着してまず圧倒されたのは、他でもない客層の若さと華やかさだった。主に20代と思しき人たちがそれぞれの態度でファッションを楽しみながら、友達やカップルと大勢集っている。アリーナ規模で、こういった雰囲気のライブはなかなかない。昨年のオリヴィア・ロドリゴ、先日のビリー・アイリッシュの来日公演に近いような華やかさがありつつ、この日はさらにひと癖ひねったセンスが目立っていた。一時期のカニエ・ウェストやファレルが放っていたトータルなアーティスト像を、いま最もリアルタイムで体現しているのはタイラーなのかもしれない——そういった思いを強くする。
開演時間が近づくと、会場の各所でグッズとともに記念撮影をしていた若者たちが「そろそろ始まる!」と急ぎ足で駆け抜けていく。まずはオープニングアクト、パリス・テキサスの出番だ。海外では彼らとリル・ヨッティー、タイラーという三組で今回のツアーをまわっているわけだが、ヒップホップを軸に他ジャンル要素を絶妙に加えたサウンドが共通点と言えるだろうか。その通り、アリーナ中央で、ヒップホップのビートにギターリフを組み合わせながらラフにラップしていく姿は、ストリート感に満ちていて実にエキサイティング。ステージをぐるぐると動き回るDJ含めた三人に呼応するかのように、観客のノリもどんどん高まっていく。止まらないハンズアップに、アリーナ会場とは思えないライブハウスのような動き。今日のお客さんは、ただ者じゃないぞ——“girls like drugs”といった曲で揺れまくるグルーヴィな会場の空気を体感し、そう確信した。アリーナもスタンドも、もはやメインアクト並みのはしゃぎっぷりで、タイラーへの期待がどんどん高まっていく。(以下、本誌記事へ続く)
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