日経ライブレポート「ジェイク・バグ」

デビュー・アルバムがいきなり全英第1位。10代の天才アーティストとして華々しく登場したジェイク・バグも20歳になった。その彼が3度目の来日を果たした。セカンド・アルバムも全英3位を獲得、デビューから3年で評価と実績を持ったアーティストの地位を確かなものにしてしまった。

しかしそうは言っても20歳であることに変わりはない。評価やセールスが高くても、そこと全てでバランスの取れる年齢ではない。ジェイク・バグが素晴らしいのは、そこで無理な背伸びをしないところだ。あくまで20歳の自分の等身大を貫き通している。

今回のライヴも、昔からのつきあいの同世代のドラマーとベーシストをバックに3人で行った。お世辞にも上手いとはいえないメンバーだが、きっと彼はこの3人が作り出す世界を大切にしたいのだと思う。現在の彼なら、もっと腕のあるミュージシャンを揃え、派手な演出のステージを作ることは簡単だろう。しかし彼はメンバーも演出も変えず、デビュー当時と同じようにMCも少なく淡々と歌い続ける。

ではライヴがデビュー当時と同じかと言えば、全く違う。今回のライヴは、歌の説得力、演奏の確実さが格段に向上し、ライヴ全体に大きな物語性が生まれた。ライヴ・パフォーマーとしての筋力が全く違っていることを見せ付けたステージだった。

若い天才が現れると、僕達は早い成長物語を期待してしまう。しかし彼は周りのそうしたプレッシャーに動じることなく、自分のスピードを守り続けた。結果、そのスピードが破格のものであることが証明されたステージだった。

4月30日、Zepp Tokyo。
(2014年5月22日 日本経済新聞夕刊掲載)
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