日経ライブレポート「ジェフ・ベック」

ジェフ・ベックは何故古くならないのだろう。ストーンズやツェッペリンのような古典としての普遍性というものとは違うし、プリンスのように常に時代の音と向き合い、ヒップホップからEDMまで新しいスタイルを取り入れていくのとも違う。とても独特だ。今回のライヴもいつもと同じといえば同じなのだが、懐メロ感も時代遅れ感も全くないのが凄い。

今回はゲスト・ヴォーカルとしてジミー・ホールが参加。当然、セットリストにはヴォーカル・ナンバーがいつもより多くなった。

とは言え、ライヴの主役は当たり前だが彼のギター。ヴォーカル・ナンバーも普通のバンド・アンサンブルとは違い、あくまでもギターがメインになっている。本来、ヴォーカルのサポート役となるギターが主役で、ヴォーカルがそのサポートをしている感じなのだ。ジミー・ホールはとても上手いヴォーカリストで、この日も頑張って熱唱していたが不思議と存在感が薄い。やはりジェフ・ベックのギターの存在感が大き過ぎるのだ。

ギターがロックの主役でなくなって長い時間が経つ。今やギター・ロックという言葉があるように、あえてギターをメインとしたロックというジャンルを区分けしなければならなくなった。その中でジェフ・ベックはギターという楽器の持つ可能性や未来、そしてパワーに対しとても楽観的だ。ギターに対する信頼と愛が半端ではないのだ。彼の中ではロックの主役がギターである時代が続いているのである。40年前と変わらない白のストラトとタンクトップのスタイルが似合う奇跡、彼は時間を止めるから古くならない。

アンコールラストにはB.B.キング追悼ということで「ザ・スリル・イズ・ゴーン」も演奏された。

9月25日、Zepp Tokyo。
(2015年10月20日 日本経済新聞夕刊掲載)
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