日経ライブレポート「ジェイミーXX」

たった1人のDJパフォーマンス、しかもこうしたステージでのお約束の映像演出なしの、ある意味とても地味なライヴだったが、2時間があっという間に過ぎていった。しかもそれはとてもドラマチックな2時間だった。

英国で人気の高いTHE XXというグループのリーダーであるジェイミー・スミスのソロ・プロジェクトがジェイミーXXだ。昨年発表されたデビュー・ソロ・アルバム「イン・カラー」は、英米の音楽メディアの2015年のベスト・アルバムに選ばれ、とても高い評価を受けた。タイトルの通り、カラフルな内容の作品で、エレクトロやアンビエントというデジタルでクールな世界観から、ポップ、ソウル、ディスコというフィジカルでホットな世界観まで幅広く表現されていた。ジェイミー・スミスというミュージシャンの音楽世界を構成している要素が、ここでは無邪気に無防備で展開されているのだな、と思いながら僕はこのアルバムを聴いた。

THE XXというバンドではイメージ戦略上、とてもクールでミニマルな世界観を作っているが、ソロではもっと解放的で自由な音作りがされている。今回のライヴはソロの解放感と自由さが伸び伸びと表現されていた。

ライヴが進むにつれ、どんどんフィジカルでエモーショナルな感じに盛りあがっていくところは、ドラマチックで楽しかった。ミラーボールを巧妙に使った照明演出も、アナログな手法ではあるが彼の音とマッチしていた。1曲目がデビッド・ボウイの「レッツ・ダンス」だったのだが、そうした生々しい想いがストレートに伝わるDJパフォーマンスだった。

1月13日、赤坂BLITZ。
(2016年1月27日 日本経済新聞夕刊掲載)
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