日経ライブレポート「ザ・キラーズ」

たくさんの曲でシング・アロングが起きた。英語の歌詞にもかかわらず、これだけ多くのお客さんが一緒に歌えるのは素晴らしいと思った。それだけバンドや楽曲に対するお客さんの愛が強いのだ。と、同時に、一緒に歌いたくなる曲、歌える曲を数多く持っているのがキラーズの特徴でもあるのだ。

キラーズのメロディーはわかりやすい。言葉とメロディーの組み合わせが自然で憶えやすい。だから歌いやすい。それは彼らの音楽の大切な要素だ。今回が初の武道館で、これまで日本公演の会場はライブハウスだった。しかし世界規模では彼らはスタジアムバンドであり、大型フェスのヘッドライナーも何度も務めてきた。その人気を支えてきたのが歌いやすくドラマチックなメロディーである。今回は初の武道館ということで、ようやく日本でも彼らの世界的なスケールに準ずる会場でのパフォーマンスとなった。オープニングでいきなり大量の紙吹雪が飛ばされ、ステージが見えないほどの派手な演出が行われたが、彼らの世界観をしっかり表現できる場所に立つことができた全力投球感が気持ち良かった。ボーカルのブランドンはプレスリーを思わせる古典的なロックスター風のパフォーマンスを得意とするが、ステージの端から端まで使って、そのポテンシャルを遺憾なく発揮していた。

代表曲が次から次へと歌われ、あっという間の90分だった。エンターテインメントに徹したステージングと合唱の起きたポップなメロディーは、なぜ彼らが世界的に高い人気を保ち続けているのか、その理由がはっきり伝わってくるものだった。
9月12日、日本武道館。
(2018年10月2日 日本経済新聞夕刊掲載)
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