日経ライブレポート「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」

昨年、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(以下バンド)は、オリジナル・アルバムを二作発表した。キャリア40年のベテランバンドとしては非常に珍しいことである。どうしてそのようなことが起きたか。バンドにジョン・フルシアンテが復帰したからだ。無論、それ以外にも理由はあるだろうが、一番大きな理由はそれだ。

彼はオリジナル・メンバーではないが、多くの代表作は彼が在籍していた時代に作られていて、ファンはジョンが創作の重要なエンジンであることを知っている。2009年に彼はバンドから2度目の脱退をする。それから10年後の19年に再び復帰、22年に16年ぶりに彼が参加したオリジナルアルバムが発表された。ファンの期待通りの作品で見事に全米全英1位を獲得した。今回の来日はジョンのいるバンドとしては16年ぶりとなる。ファンの期待は膨らむばかりだ。

ライブはいきなりジョンの長いギターソロから始まった。彼が在籍していた当時の定番とも言えるスタイルだ。そして一曲目が代表的なヒット曲「キャント・ストップ」。東京ドーム満員の観客の興奮はいきなりオープニングからピークに達し、そのままアンコールまでその熱い空気は変わらなかった。

新作からの曲と代表曲のバランスが絶妙で、しかもその代表曲の多くがジョン在籍時のものなので、まさに2023年のバンドのフル・スペックを堪能できる満足度の高いステージだった。そしてメンバーが、自分達の現在がとても良いという自信を感じながら演奏しているのが観る側にも伝わってくるようなライブだった。

2月19日、東京ドーム。
(2023年3月2日 日本経済新聞夕刊掲載)
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