このバンドブームはこの先いったいどうなるんだろう?

このバンドブームはこの先いったいどうなるんだろう?
欅坂46の新曲“月曜日の朝、スカートを切られた”がTBS『音楽の日』で初披露された。
タイトルのインパクトもかなりのものだが、歌詞の内容も直接的で、振り付けの生々しさもこれまでの曲をさらに超えている。
ファン以外も含めて賛否両論を呼んだが、オンエアの4日後にリリースされたアルバム『真っ白いものは汚したくなる』は発売後3日間で22万枚を超えて1位になった。
 
あの事件後のこのタイミングで新曲に“月曜日の朝、スカートを切られた”というタイトルを付けて、デビュー曲“サイレントマジョリティー”のプロローグという設定の物語にして歌詞を書いた秋元康の天才性は凄いと思うし、
アイドルの常識を打ち破るあの振り付けは衝撃的だし、
その曲が与えたショックとインパクトが賛否両論とともに拡散してその4日後にはアルバムの大きなセールスという結果に結びついたという流れは本当に見事だ。
 
 
と、ここまではまあ誰でも思ったことだと思うんだけど、僕の場合また例によってさらにいろいろ考えてしまった。

 

なんでこれがロック・バンドじゃないんだろうか。
 
 

 

「共謀罪」の成立をめぐって世論が揺れていた最中に、SKY-HIが“キョウボウザイ”という曲を突然YouTubeにアップした。
僕は彼の表現者としての本能とラッパーとしての反射神経に敬意を込めてすぐにブログにリンクを貼って紹介した。

そのブログをアップした時も僕は思った。



なんでロック・バンドからこれが出てこないんだろうか。

 


実は、日本だけじゃなくてアメリカ、ヨーロッパでも不思議なことに同じような事態になっている。
以前はロック・バンドの曲、アルバム、発言、存在自体が世間に波風を立て、インパクトを与え、賛否両論を呼び、その結果として大きな支持を得てセールスに結びつくというダイナミズムが世界中にあった。
オアシスもニルヴァーナも、グリーン・デイもレディオヘッドも、そうやって音楽だけに止まらない巨大な影響力を放ってきた。
だが今はそれがケイティー・ペリーやテイラー・スウィフト、ジャスティン・ビーバーやビヨンセと言ったポップ・スター、あるいはカニエ・ウェスト、ケンドリック・ラマー、ドレイク、アヴィーチーといったラッパーやDJに取って代わられている。
今、時代に対して彼らほどの強いインパクトと影響力を持つ若手ロック・バンドは欧米には存在しない。
 
 

日本は今、空前のバンド・ブームと言われている。
どの都市にもロック・バンドがたくさん存在している。
その中から勝ち抜き、シーンに浮上してくるバンドは限られている。

だが、その選ばれたロック・バンドをめぐる話題が「ライブの会場のキャパの大きさ」と「タイアップの話」と「MVの視聴回数」…という状況が数年続いている気がする。

それは別に悪いことではないけれども、ロック、ロック・バンドが本来持っているダイナミズム──インパクトがあり、直接的で、賛否両論を恐れず、世間に揺さぶりをかけるような──を放っているロック・バンドは少ない。
海外の状況と、そこはとても似ている。

 


何度も言うが、それ自体は悪いことでもなんでもない。
僕はロック雑誌の編集者として30年間ロック・シーンを見てきたからよくわかるのだけど、こういう時期って5年から10年ぐらいのスパンで訪れるものだし、そんな時期ですらロックの本質を掴んで離さないバンドは数は少なくてもちゃんといて、次の世代にそのスピリットをしっかりと伝えているはずだからだ。
そしてまた何かをきっかけに、誰かをきっかけにしてロックはダイナミズム取り戻してその本質をむき出したままチャートにも結果の爪痕を残すような、そんな時代になる。

本当かよ? と思うかもしれないが、そうならなかったことはこれまで一度もなかった、と言うことだけは間違いのない事実だ。

山崎洋一郎

(ロッキング・オン・ジャパン9月号 コラム「激刊!山崎」より転載)
山崎洋一郎の「総編集長日記」の最新記事
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