Mr.Childrenのニューアルバム『重力と呼吸』に寄せて

Mr.Childrenのニューアルバム『重力と呼吸』に寄せて
ドラムス・JENの「ワン・ツー!」のカウントとともにいきなりバンドサウンドが炸裂する、アルバム1曲目の「Your Song」。
そして2曲目はブルハ、ジュンスカらの「80年代ビート・パンク」を思わせるダウンピッキングまみれのエイトビート・ロック、「海にて、心は裸になりたがる」。
さらに3曲目は、「名もなき詩」か?と思わせるロッキンなイントロから始まったと思いきやこれまでのミスチルにはなかったノイジーなエレキギターのアドリブ・ソロがうねりまくる「SINGLES」。
その次の「here comes my love」でようやくしっとり目のバラードかと思いきや、(これは既に配信されているからみなさんご存知の通り)後半はクイーンばりの大クライマックスへと突入する(レコーディングの時、桜井はブライアン・メイになり切ってギターを掲げてソロを弾きまくっていたらしい)。

そう、Mr.Childrenの今回のアルバムは相当ロックだ。
「その理由はなんだろう?」「この時代にミスチルがロックに向かったのはなぜだろう?」と考えそうになる自分を気持ちよく吹っ飛ばしてしまうぐらい、無邪気でダイナミックで、そして本物のロックサウンドをMr.Childrenは今作で思いきり鳴らしている。
聴いてて高揚が止まらない。

もちろんそれはサウンドの話で、楽曲、メロディーは、これまで桜井が書いてきた珠玉のメロディーの積み重ねの上にさらにもう一枚光のフイルムを重ねたような、もはや「貴い」という言葉を使いたくなるレベルに全曲が達している。
だからこそ、裸のバンドサウンドがさらにみずみずしく輝いて聴こえる。

前作『REFLECTION』では、
「Mr.Childrenって、さあこの指とまれっていうサビでみんなで思いを共有するっていう、それをお茶の間レベルでちゃんとやる存在だったけど、もう音楽全体がそれを必要としていないかもしれない」(桜井和寿)
という考えのもと全てのスキルとアイデアを注ぎ込み、あらゆるタイプの曲調、あらゆるタイプのメッセージを全種類やり切ることで、今の時代としっかりと向き合ってみせた。
そこから何度もの長いツアーを経て、今度は自分たちのやりたいこと、挑戦したいこと───つまり「ロックバンド・Mr.Childrenとしての裸の肉体性で勝負する」という、これまでやったことのないやり方で時代と向き合おうとしているのがこのアルバムだ。
そして、それは圧倒的なまでに成功している。

今回、本当に限られた取材のうちの1本がこのインタビューになる。
10月6日にリリースされる『重力と呼吸』の最高のロック・ソングを浴びながら、ハイな気分で読んでもらえたら、と思う。(総編集長 山崎洋一郎)


ロッキング・オン・ジャパン最新号 Mr.Children巻頭特集より
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