今この原稿は5月21日木曜日、普通の平日の午後4時に、自宅の部屋で書いている。
6畳の自室はデスクと椅子とオーディオと映像モニター、多めにストックした水の2リットルボトルや食料の箱、簡単な筋トレ用具とジョギングウエア、そして自分の身体とパソコン、できっちり埋まっている。
完全に自宅勤務態勢である。
朝起きてから夜仕事が終わるまで、ほとんどこの部屋のこの定位置ですべての業務を行っている。
朝はこの場所からZoomで各編集部のミーティングをやり、そのあと夜までほぼノンストップでいろいろな会議や打ち合わせをすべてZoomでやりながら、各スタッフや編集部から送られてくる原稿やデザインや企画書をチェックして指示を出す。
パソコンとスマホ以外、何も使わない。
プリンターやコピー機はもちろん、紙の書類や、ペンやセロテープといった文房具すらほとんど使わなくなった。
そして、アーティストのインタビューもこの部屋のこの定位置からZoomで行っている。
先月号ではまだクリープハイプの尾崎世界観のインタビューをiPhoneでやったぐらいだったが、今月号ではくるりの岸田繁もUVERworldのTAKUYA∞も、Novelbrightの5人も、電気グルーヴの「メロン牧場」でさえも、すべてZoomを使ってリモートで行った。
今後しばらくはこういう形でやっていくことになるだろう。
自宅の6畳の部屋からパソコンを使って仕事をするのは、今のところ非常に能率的で、精度もキープできている。
ページデザインの確認だけはPC画面だとなかなか難しいが、あとはほぼ問題ない。
インタビューに関しても、特に大きな問題はない。
TAKUYA∞も尾崎世界観も、今までとは違うこのやり方を気に入ってたし、おたがい京都と東京にいてしかも深夜にやった岸田繁のインタビューもいつもと変わらないゆるーいグルーヴで普通にやれた。
メンバー全員20代のNovelbrightのインタビューは、若者のZoom飲み会におじさんが割り込んだみたいな感じだったが、それはそれで面白かった。
言うまでもなく電気グルーヴのメロン牧場は始まった瞬間にリアルもZoomもクソも関係ない怒涛の展開で、いっさい何の問題もなし。
今の編集部にとって大きな問題があるとすれば、それは2つで、一つは「音楽シーン自体の動きがほとんどストップしている」ということ。
ライブもない、リリースも減り、僕ら自身もJAPAN JAMとROCK IN JAPANの2つのフェスを中止せざるを得なかった。こんな状況の中で、音楽雑誌は何をすればいいのか? という問題。
この問題に最初はスタッフ全員がぶち当たったのだが、意外にすぐに答えが見えた。
すなわち、今起きていることをそのまま伝えればいいのだ。
今のこの状況の中でアーティストが何を考えているのかをインタビューし、今公開される作品がどういう意味を放つのかを論考する記事を作り、未来へ向けた計画や最新ニュースを精査して届ける──これまでどおり「今」に対してリアルなJAPANであればいいだけの話だ。
東日本大震災の時もJAPANはそうだった。
もう一つの大きな問題は、フォトセッションがいつものようにできない、ということ。
アーティストの言葉を捉える方法として電話やZoomやメールなどいくつかあるように、ビジュアルを捉える方法もいくつかあるはずだが、なかなか思いつかない。
自撮りしてもらうか、過去の写真を使うか、Zoomでのインタビュー映像をスクショするか、カメラマンとアーティストが距離をとって細心の注意を払った上でフォトセッションするか──などなどまだいろいろ試行錯誤中である。
今月号ではBiSHがスマホとZoomを使ったリモート撮影、TAKUYA∞はセルフ撮影、岸田繁は自宅撮影の写真を提供してもらった。
BiSHのこれまでの写真にはなかったプライベート感とせつなさ、TAKUYA∞のプロレベルの写真テク、岸田繁のまさかの入浴♡シーンといった、普段では見れないものが見れて、結果として非常にいい誌面が作れていると思う。
先月号の尾崎世界観「初のおうち写真」も画期的だった。
まあこんな感じで、状況や環境は激変したとしてもその中でリアルにやっていくしかない。
というか、人と人とが接することなく離れたままでどれだけ面白い音楽雑誌が作れるか、という挑戦はなかなか興味深い。
そして、実際にやってみてかなり面白い。
それが今月号の誌面に表れていると思う。
やれるだけやってやろうと思っているので見守っててください。(山崎洋一郎)
次号ロッキング・オン・ジャパン『激刊!山崎』より
ライブもない、生のインタビューも直接の撮影も不可能なコロナ禍の中で、ロッキング・オン・ジャパンを作りながら思うこと
2020.05.21 17:15