ソニマニ最高!ナイン・インチとマイブラは攻めまくりのバンドサウンド、フライング・ロータスはBrainfeeder一党と共に先鋭的ライブ。濃すぎる一夜に圧倒された!!

ソニマニ最高!ナイン・インチとマイブラは攻めまくりのバンドサウンド、フライング・ロータスはBrainfeeder一党と共に先鋭的ライブ。濃すぎる一夜に圧倒された!!

2018年のSONICMANIAは、まず第1弾出演アーティストとして発表されたうちの2組、ナイン・インチ・ネイルズマイ・ブラッディ・ヴァレンタインである。2013年フジロックの初日に同じステージに立った同世代の重要アクトが、奇しくも5年後の「SONICMANIA」で競演を果たした(その後も両者はそれぞれに来日公演を行っている)。

NINは、ステージ上で動き回るカメラマンの映像がモノクロで映し出され、まるでパンクのドキュメンタリー映画のようだ。当初連作として構想された近作曲を織り交ぜて進むステージも、途中エレクトロニックなフォーメーションに変化することはあるものの、5ピースのフィジカルで衝動的なバンドサウンドが核になっている。『ヘジテイション・マークス』というアルバムは2010年代のサウンドにアップデートされたNINを伝えるためにどうしても必要な作品だったが、近作群はロック不遇の時代に真っ向から抗う作風になった。トレントもギターを握って昂ぶったシャウトを投げかける“Shit Mirror”、ノー・ウェイブ風の不穏なジャズ・インプロが挿入された“God Break Down The Door”と、新曲群がムードの鍵を握っている。多大なインスピレーションをもたらしてくれたデヴィッド・ボウイに想いを寄せてのカバー“I’m Afraid of Americans”、そして万感の“Hurt”と、直情的であることがキャッチーかつコマーシャルであることを伝える、熱いライブだった。


マイブラは、初っ端の“I Only Said”からこの幕張メッセの環境下でベストと思える大音量と音響美を振りまいていた。結果的には、日本での単独公演を含めライブツアーを経ての出演となったけれど、良いコンディションのマイブラに触れることができてラッキーだ。スパンコールの衣装にラメ入りのギターを携えたビリンダ、そして時折キレの良いアクションやポーズで決めるデビーと、その姿は華やかでとても若々しく見える。今や『m b v』収録曲も自然に溶け込んだセットリストの中、とりわけ気がかりなのはニュー・アルバムを見据えたマイブラの現在地だ。この夜、序盤のうちに披露された新曲は、まるでハイになったザ・ストゥージズが思い切りよくプレイしているような、眩いサウンドのロックナンバーであった。精力的に見える今のマイブラに、とても良く似合っている。NINとは異なる形でバンドサウンドのロマンを伝えていた彼らもまた、ロック不遇の時代に向けた苛立ちが新たなモチベーションとなっているのかも知れない。ラストは圧巻の長尺ノイズインプロへと繋ぐ“You Made Me Realise”である。

フルで観ることを決めていた2組について先に書いてしまったが、クリーン・バンディットは頻繁に繰り広げられる日本でのステージを含め、ライブで鍛えられたポップでフィジカルなパフォーマンスが映える。観るたびに感慨が増す思いだ。その成果はきっと、来るニュー・アルバムへと落とし込まれるだろう。普遍的で風化しない、タフなダンス・ポップ作となるはずである。


ジョージ・クリントン御大のPファンク軍団まで巻き込んだ「Brainfeeder Night in SonicMania」では、理知的にしてハイエナジーなライブ演奏を繰り広げるドリアン・コンセプト(彼の手元を捉える映像が欲しい)や、フリーキーなトリオ・ジャズと酩酊AORの往復ビンタをかますサンダーキャットらが大活躍。フライング・ロータスは3Dメガネを配布して繰り広げる刺激的なオーディオ・ビジュアル・ライブであり、最後にはBrainfeederの設立10周年という節目で感謝の思いを投げかけ、先鋭性を守り抜く“Never Catch Me”で締めくくった。かっこいい。直前まで、この企画に一晩中張り付いてやろうかと悩んでいたぐらいの濃い内容だ。

あとは朝まで、電気グルーヴでひたすら楽しく踊って過ごしました。サマソニ本編を前に、体力温存を忘れさせてしまう「SONICMANIA」。今年もたいへんに厄介で、最高でした。(小池宏和)
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