ソニマニで「ブレインフィーダー」を体感! このレーベルこの陣容ならではの音像の広さ、そして聴きやすさを見事に体現した6時間

ソニマニで「ブレインフィーダー」を体感! このレーベルこの陣容ならではの音像の広さ、そして聴きやすさを見事に体現した6時間 - pic by TEPPEI KISHIDApic by TEPPEI KISHIDA

フライング・ロータス率いるレーベル、ブレインフィーダーのアーティストが勢揃いした「SONICMANIA」でのブレインフィーダー・ナイト。ヒップホップからエレクトロニック・ミュージック、果てはファンクやジャズまでをも呑み込む自身のどこまでも懐の深い世界観と同様に、間口は広いけれどもどこまでも楽しめるビートとグルーヴを各アーティストのライブで体験させてくれた。

オープナーを飾ったのはオランダ出身のジェイムスズー。クラウト・ロック的でもあるエレクトロニック・サウンドと、ファンキーなキーボードのフレーズ、そして炸裂する瞬発力のすべてが錯綜する刺激的なアクトだった。また、ところどころで聴かせるエレクトロニックでありながら、クラシックのバロック風室内器楽曲的な音像がとても印象的でもあった。終演時には次回作はオーケストラとの作品になるとMCで明らかにしていた。

続いて登場したのは、その超絶的なキーボードと機材の操作テクニックで知られるドリアン・コンセプト。サウンドからビートまで変幻自在に音を繰り出しつつ、グルーヴは常に安定していて、めくるめくような音に浸りつつもこの日一番身体が乗っていくパフォーマンスになったようにも思う。気がついてみるとオーディエンスが相当押しかけてきていたのも、そんな磁力が招いたものだったのだろう。

次に登場したのはジョージ・クリントン率いるパーラメントファンカデリック(Pファンク)。1956年にジョージがドゥーワップ・コーラス・グループとして結成したザ・パーラメンツからファンクの一大勢力へとなったPファンクだが、結成62年目の今年いっぱいでジョージはツアーから身を引くと宣言していて、おそらくこれ(と19日のビーチ・ステージ)が日本でジョージの姿を拝む最後となるかもしれないだけに、ファンにはどうしても見逃せないものだったはずだ。興味のある若いオーディエンスなら、一度は観ておきたかったものだっただろうと思う。

それにしてもここまで観客が集まるとは、という熱気の中、オープナーは9月にリリースされるパーラメントとして38年ぶりの新作『メディケイド・フロード・ドッグ』からの新曲"I’m Gon Make U Sick O’Me"を披露。これがパーラメント風ファンクを真正面から打ち出すナンバーで、まさにファンクのオーセンティックなグルーヴを追求するパーラメントならではの曲で、終盤では"Up For The Down Stroke"に雪崩れ込む展開にもなった。その後の前半はほとんどが14年にファンカデリックとしてリリースした『First You Gotta Shake the Gate』からの楽曲で、かつてのファンカデリックがロックを積極的に導入したのに対して、今のファンカデリックの新曲群は若手メンバーのラップ・パフォーマンスを大きく取り上げたものになっており、この日のオーディエンスとの親和力もとても高かったように思う。後半は"Flashlight"以降、名曲オンパレードの極上タイムとなった。

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続いたのはサンダーキャット。メンバーはサンダーキャットにドラムとキーボードのトリオ編成で、冒頭から中盤まで一気に最新作『ドランク』の序盤をたたみかけていくが、その息をもつかせない超絶的なパフォーマンスの掛け合いはただ壮絶。ただ、そこに乗っかってくるサンダーキャットのボーカルとメロディがどこまでも甘くポップで、さらに必ずポップなフックが曲のどこかに施されているため、楽曲構造が崩されていかないところがあまりにも凄い。ひたすらに3人による超絶技巧が詰め込まれたパッケージとなっていて、それがライブ・パフォーマンスとして襲いかかってくるところがたまらなかった。中盤からは『アポカリプス』や『The Beyond / Where the Giants Roam』からの楽曲も交えた展開になったが、『ドランク』のタイトルの意味を解き明かす"Walk On By"がとても切なくて素晴らしかった。

そしてこの日のメイン・アクトのフライング・ロータス。会場では事前に3D眼鏡が配布されていて、開演が近くなると「3D眼鏡をつけよう」というメッセージが映し出される。眼鏡をかけて観てみると、バカみたいだけれどもほんとにそのメッセージが飛び出してきているので刺激的だった。時間も深くなってきてこちらも体力が落ちてきて、かなりキマりやすくなっていたこともあるかもしれない。それでも、エレクトロニック・ヒップホップから超絶トラップ、アシッド・ジャズなどと縦横無尽にジャンルの海の上を駆け巡りながら、どこまでもわかりやすく聴きやすいビートを繰り出していくフライローのパフォーマンスは素晴らしかったし、ビジュアルをそのサウンドとこれほどまでに連動して楽しめたことは個人的になかったのでとても新鮮だった。

ソニマニで「ブレインフィーダー」を体感! このレーベルこの陣容ならではの音像の広さ、そして聴きやすさを見事に体現した6時間

特にサウンドがアンビエント的な展開を取ったところで『ツイン・ピークス』のテーマ曲をいきなり鳴らしたところは個人的にとても楽しかったし、この時の映像がもくもくと煙がこちらに迫って来るもので、とても『ツイン・ピークス』的で痛快そのもの。その後人形を使った映像とアニメ『攻殻機動隊』のテーマ曲をシンクロさせるところもフライング・ロータスのショーマンシップをよく体現していて微笑ましかった。

どこかストイックなイメージの強いフライング・ロータスだが、むしろエキセントリックでエンタテイメント性に溢れているということを今回のパフォーマンスはよくわからせてくれた。それに、なんだかヒップホップの歴史をすべて感覚的に聴いてしまったという感じがライブの後に身体に残ったところにとても感銘を受けたし、そこがむしょうに楽しかった。

ラストはロス・フロム・フレンズ。イギリス出身のプロデューサーでギタリストとサックスを両脇に従えてのステージとなった。テクノ、ハウス、あるいはニュー・ジャック・スウィングなどさまざまなビートを繰り出して、そこにさまざまなテクスチャーを加えることで楽しいパフォーマンスを披露することになった。御大フライローの後という難しい出番ではあったけど、見た目にも楽しく、音も軽快でとても気持ちのいい締め括りになったと思う。(高見展)
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