テイラー・スウィフト、世界ツアー最終公演。どこまでも常識破りだが、ファンには歓喜の渦となったとてつもない一夜を観た!

pic by Yoshika Horita

最新アルバム『レピュテーション』を引っ提げての世界ツアー、その最終公演となったテイラー・スウィフトの東京ドーム公演。現在のテイラーのすべてを注ぎ込んだ圧倒的な内容で、なりふり構わずに今の自分というものを打ち出していく姿勢と執念にはすさまじい説得力があったし、素晴らしい内容になっていた。

オープナーとなったチャーリーXCXの小気味いいセットの後、いよいよ場内が暗転すると大歓声が上がり、入場時に配られたリストバンドが一斉に点滅を始めて、否応なく会場は興奮に包まれる。そこへテイラーが登場し、演奏は“...Ready For It?”へ。テイラーは黒のスパンコールのボディスーツとブーツという姿で、このとてつもないライブの幕開けを華やかなボーカルとともに告げる。

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ステージには三角形にせり出した巨大な壁が占めていて、実はこの奥でバンドが演奏を続けているのだ。壁は巨大なビジョンの役割も果たしており、ステージの景観としても先例のないもので、その先の意匠や仕掛けの意気込みを予感させる佇まいも感じさせた。

バンドがいったんブルージーな演奏に入ったところで、テイラーの歌は“I Did Something Bad”へ。この展開は間違いなくアルバム『レピュテーション』の内容をなぞるものとなっていて、今回のライブのテーマは、間違いなくこの作品にあるのだ。そして、それはカニエ・ウェストの“Famous”の歌詞をめぐっての対立と、その後に自分がネットでバッシングを受けることになった時の感情とすべて対峙していくものなのだ。当然それは力の入った内容になるはずなのはわかっていたつもりだったが、想像をはるかに越えたスケールのパフォーマンスが待ち構えていることが、この曲の演奏中に肌から感じ取れるような気がした。

この曲を終えると、テイラーは短いMCで観客に挨拶し、アルバムの中では最もテイラー本来の魅力に溢れた“Gorgeous”へ。十字路のように構成されているステージと花道を駆使して、目一杯ダンサーとの振付も披露しながら、恋心を歌うテイラーの姿は先ほどとは打って変わってどこまでも可憐なものだ。そして、そのまま“Style”、“Love Story”、“You Belong With Me”と過去の人気曲が続き、ファンには激しく嬉しい時間帯になった。

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そして演奏はまた『レピュテーション』の“Look What You Made Me Do”へ。ある意味でこの曲が今回のツアーとアルバムのメイン・テーマでもあって、ビジョンには噛みつこうとするコブラの映像が映し出される。さらにステージの壁が割れ、中央から巨大コブラが聳え立つことに。このコブラの演出はなんなのかというと、カニエ・ウェストの妻、キム・カーダシアンにツイッターで毒蛇女呼ばわりされ、それが拡散してしまったことへのあてつけだ。さらに蛇と呼ばれたからには蛇をいくらでも披露してみせるという意趣返しでもあるわけだが、ここまで徹底することで特定の人物への不快感を綴るこの曲の凄みがユーモアへと昇華されていくところがものすごい。

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一転してアルバム中のラヴソング“End Game”、“King Of My Heart”へとたたみかけたあとは、傷心を経験しながら誰かと出会うことを綴った”Delicate”で、この日初めてしっとりとした演奏を聴かせてくれるのだ。

その後は第2ステージへと移動するが、そこでもまたしても舞台から蛇が立ち上がる。そしてチャーリーXCXをゲストに迎えて”Shake It Off”を披露し、会場が最高潮にヒートアップする瞬間を生み出してみせる。その後、アコースティック・ギターを抱えて、“So It Goes…”、“Wildest Dreams”を弾き語りで歌い上げ、自身の原点もまたしっかり披露してみせた。

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この先は終盤となり、まずは第3ステージへ移り、その後、中央ステージに戻ってピアノで“Long Live”と“New Year’s Day”をしっとりと聴かせてみせる。そして最終的には“Getaway Car”、“Call It What You Want”、“We Are Never Ever Getting Back Together”、そして“This Is Why We Can't Have Nice Things”と、怒濤の勢いでライブを締め括った。

結局、この日披露した『レピュテーション』からの楽曲は、全24曲中のうちなんと15曲。これは普通なら考えられないような展開だし、それだけ今回のツアーはこのアルバムに特化されたものだったのだ。そしてこのアルバムの内容は、それだけ切実に表現として吐き出していかなければならない作品だったということなのだ。さらにそのライブとして、これだけ大掛かりなショーを構想して実践しつつも、自分のファンの期待はまったく裏切っていないパフォーマンスになっていたところに、テイラーの桁違いなパワーを見せつけられ、感銘を受けたのだった。(高見展)



<SET LIST>
1. ...Ready For It?
2. I Did Something Bad
3. Gorgeous
4. Style
5. Love Story
6. You Belong With Me
7. Look What You Made Me Do
8. End Game
9. King Of My Heart
10. Delicate
11. Shake It Off
12. So It Goes...
13. Wildest Dreams
14. Blank Space
15. Dress
16. Bad Blood
17. Should've Said No
18. Don’t Blame Me
19. Long Live
20. New Year’s Day
21. Getaway Car
22. Call It What You Want
23. We Are Never Ever Getting Back Together
24. This Is Why We Can’t Have Nice Things
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