デフ・レパードの活況と「殿堂入り」決定に際して改めて実感させられる、このバンドの特異な魅力

デフ・レパードの活況と「殿堂入り」決定に際して改めて実感させられる、このバンドの特異な魅力 - pic by Kevin Nixonpic by Kevin Nixon

現地時間の1月10日、デフ・レパードがこの夏にカナダ・ツアーを実施することが発表された。7月12日のハリファックスを皮切りに同月末のカルガリーまで続く全11公演に及ぶもので、スペシャル・ゲストにはかねてから彼らと親交の深いテスラが起用される。

また、同ツアー実施前の6月から7月上旬にかけては全14公演のヨーロッパ・ツアーが行なわれることもすでに発表されており、このなかには大型フェスへの出演や、ボン・ジョヴィホワイトスネイクとのカップリング公演も含まれている。

彼らにとって現時点での最新オリジナル作『デフ・レパード』がリリースされたのは2015年10月のことであり、すでに丸3年以上が経過しているわけだが、同作に伴うツアーを終えてからも、このバンドはライヴ・バンドとしての活発な動きを止めていない。昨年は日本でも、1987年生まれの名作『ヒステリア』の完全再現ライヴが好評を博したが、ジャパン・ツアー終了後の彼らはスコーピオンズとのジョイントによるオーストラリア/ニュージーランド・ツアー、さらに12月にはチープ・トリックをゲストに迎えてのUKツアーも行なっている。

2018年全体を通じて、彼らは84本もの公演を消化している。なかでも素晴らしい興行成績を上げたのがジャーニーとのジョイント・ツアーで、スタジアム公演を含む同ツアーにおける総動員数は実に100万人を記録。今や80年代とは違ってアルバムが何百万枚も売れる時代ではないが、当時に勝るとも劣らない数の人たちが彼らのステージを目撃しているのだ。

そのデフ・レパードの、ロックンロールの殿堂入り決定が報じられたのが、12月半ばのこと。彼らは一般投票で1位を獲得したうえで、ザ・キュアー、スティーヴィー・ニックス、ジャネット・ジャクソンレディオヘッドロキシー・ミュージック、ゾンビーズとともにこの栄冠を獲得したのだ。フロントマンのジョー・エリオットは「ビートルズストーンズザ・フークイーンと同じ“クラブ”に入れるなんて、最高の栄誉だ」と喜びを露わにしている。

デビュー当時のデフ・レパードは、アイアン・メイデンやサクソンなどとともに、ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル、すなわち英国メタルの新世代バンドとして認知されていた。そして早くからアメリカ市場で好反応を獲得していた彼らには、80年代半ばには、いわゆるヘアー・メタルとひと括りにされていた部分もあった。が、このバンドが長きにわたり支持を集めてきた理由は、突き詰めれば楽曲の良さ、典型的なメタルの様式から逸脱した音楽性の幅広さにあると言っていい。

ロッキング・オン2月号に掲載のインタビューのなかで、ギタリストのフィル・コリンは「特別な存在になりたかったし、より柔軟でいたかった。受けてきた影響も、ロックしか聴かずにいるような他のバンドとは違っていた」と語っている。もちろん彼らの音楽の基盤となっているのは70年代のハード・ロックではある。が、そもそもグラム・ロック的なポップ・ソングとしての精度の高さを持ち合わせていた彼らの楽曲には、エレクトロニックな質感の伴うものもあれば、少々アレンジを変えればニュー・ウェイヴに聴こえそうなものも多々ある。

実際、12月にリリースされた『ザ・ストーリー・ソー・ファー:ザ・ベスト・オブ~』と題された最新ベスト・アルバムには、彼らの歴史を彩ってきたヒット曲や鉄板曲に加え、新録によるデペッシュ・モードの“パーソナル・ジーザス”のカヴァーが収められていたりもする。べつに、そこでメタル的アレンジが施されているわけではない。こうした音楽的嗜好の現れが、このバンドの良い意味での雑食性、偏見のなさを物語っている。

余談ながら、デペッシュ・モードは今のところまだ殿堂入りを果たしていない。が、今回、デフ・レパードと時を同じくしてザ・キュアーが殿堂入りするという事実にも興味深いものがある。デフ・レパードの母体が生まれたのは1977年、そしてザ・キュアーが結成されたのは1978年のこと。同じ時代にイギリスで生まれ、むしろ真逆のものとして分類されるようになったほぼ同期の2組が、こうして同時に栄冠を獲得することになったのだから。

というわけで、何を言いたいかといえば、いわゆるメタルは得意じゃないという人たちにもデフ・レパードを聴いて欲しいとうことだ。そうした人たちにこそ、このバンドの魅力を違った角度からとらえることが可能なのではないだろうか。ロックンロールの殿堂入りを決める評議員たちによる評価の理由も、そこにあったのかもしれない。驚異的なアルバム・セールスや動員数ばかりではなく。(増田勇一)
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