ザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズ、スタンダードでありつつ新鮮な新作『TBNH』が素晴らしい。その魅力を掘り下げる!

ザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズ、スタンダードでありつつ新鮮な新作『TBNH』が素晴らしい。その魅力を掘り下げる!

ザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズの新作『TBNH』が、いつも通り最高だ。前作『スウィート・フリークス』から5年。その間にライブ盤『ライヴ・アット・ザ・ソウル・キッチン』などもあったが、いずれにしろ彼らの音楽性は変わらない。70年代のソウル~ファンク~ジャズに根付いた、ダンサブルで温かみのある人力サウンドはエレクトロニックな打ち込みダンス・ビート全盛の今ではオールドスクールなスタイルではあるが、人間の体温が伝わってくるようなほどよい熱さと、適度に揺らぎがあるグルーヴは、いつの時代でも古くならない。テクノロジーに依存した音楽はテクノロジーが古くなるにつれ古びていくし、流行に左右される音楽は流行が終われば沈んでいく。それに応じて常に表現を更新していくのも現代のポップ・ミュージックとしての醍醐味ではあるが、ザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズの音楽は変わらぬことによって定番となり、ある種の道しるべや灯台のように、ポップ・ミュージックの、ダンス・ミュージックの原点を常に指し示しているのである。


1985年の結成以来、サイモン・バーソロミュー(G)とアンドリュー・レヴィ(B)という2人の主要メンバーは変わらない。ボーカリストを含めた他のメンバーが入れ替わっていくことで、彼らの音楽には常に新しい風が吹き込み続けている。今作では91~94年リリースの作品に参加し、ファンの間では歴代最高ボーカリストとして人気の高いエンディア・ダヴェンポートや、1997年のアルバム『シェルター』に参加したサイーダ・ギャレットのほか、2018年から正式メンバーとして加入し、来日公演でも歌ったアンジェラ・リッチといったボーカリストが参加して懐かしさと新鮮味が同居している。エンディアが歌い、マーク・ロンソンがプロデュースしたケンドリック・ラマーのカバー“ジーズ・ウォールズ”など、自然にカラダが揺れるヴァイブレーションには抗いがたい。彼らは決して演奏技術を売り物にするわけではなく、ガチガチに決め込んだ鉄壁なアレンジと演奏を展開するわけでもない。適度にユルい味と雰囲気で勝負するタイプだが、だからこそそこに聞く者の思い入れを可能にする余白が生まれる。


英国発のアシッド・ジャズ・ムーヴメントのなかでもエンディアのボーカルを中心に比較的オーセンティックなソウル~ファンク寄りの音楽性だったザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズは、のちのオーガニック・ソウルの輩出を促したりもした。彼らの音楽はスタンダードでありながらいつも新鮮で楽しい。それは人間のオーガニックな試みを忘れることがないからだ。(小野島大)

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