マイケル・ジャクソンについて書くのは、「おそれ」多い。この「おそれ」にはビッグネーム過ぎる畏敬の念と、熱心なファンの方々からお叱りを受けるのではないか、との純粋な恐さの両方がある。プリンスと、妹のジャネット・ジャクソンも同様。
1982年のモンスターアルバム『スリラー』の40周年記念盤の全曲解説を担当した。彼の自伝『ムーンウォーク』の英語版が手元になかったため2019年の新装版を日本語で読み直し、クインシー・ジョーンズの『クインシー・ジョーンズ自叙伝』は英語で読み返した。楽しい時間だった。
25周年のときと同様、40周年にもお蔵出し音源があるという。だが、その詳細ではなく、代わりに宇多丸さんの“スリラー”のMVに関するインタビューと高橋芳朗さんのライナーノーツ(全曲解説!)の資料が送られてきた。「ドゥわぁぁ!」という変な声が漏れた。
私より有名な高橋さんだが、元の得意分野は同じだ。読まずに書き始めたものの、広く流布されている資料か、と思い直して目を通した。案の定、ブラック・ミュージックの引用にかんしてダブっていたので派手に削り、文字数が減りすぎて締め切りが危うくなって少し戻した(きっちり遅れました)。
私は2001年のワールド・トレード・センター同時多発テロ事件の前日に行われた30周年記念コンサートで、マイケルを観ている。テレビの特番だったため非常に豪華だったが、書くスペースがなかった。
テロが1日前のマディソン・スクエア・ガーデンを標的にしていたら、アメリアのエンタメ史は大きく変わったはず。あの時点ですでに透けそうだったマイケルの肉体は、それから8年しか持たなかった。だが、彼の音楽はますます存在感を放っている。
MJについて調べたり考えたり書いたりするのはいつだって楽しく、切ない。(池城美菜子)