話題を集めまくっている、ブロンクスのラッパーがアイス・スパイスだ。くもりガラスのような、絶妙な低音ボイスでくりだすラップにまず惹かれた。
それから、ビジュアルを見てビックリ。ラガディ・アン&アンディ人形のような赤毛のアフロの持ち主だった。この人形は幼児の頃、怖くて苦手だったから一瞬、苦手になりかけた。
様になりやすいのか、ドリルのフローに挑戦するフィメールアーティストは多い。そのなかでアイス・スパイスは頭ひとつどころか、だいぶ抜け出ている。
日本からだとわかりづらいが、彼女の外見はもろに「ラティーノ」だ。スペイン語も話せるが、相手もスペイン語の話者でない限り使わないという(ニューヨークはこういう人が多い)。
同じドミニカ系のカーディ・Bが賑やかなのと対照的に、アイス・スパイスはクールであまり喋らないのに存在感が凄まじい。
シングル数枚とEP1枚しかリリースされていないのに3600字も書けるかな、との心配は杞憂に終わり、予想以上にフックが多くて楽しい仕事だった。フルのデビューアルバムが出る頃にはもっと話題をさらっているはず。
髪型は変える可能性が高いそうだから、とりあえず名前と顔を覚えていてほしい。(池城美菜子)
アイス・スパイス解説論考が掲載されるロッキング・オン5月号は、4月7日(金)発売!