函の外で、世界と向き合え

People In The Box『Wall, Window』
2014年08月06日発売
ALBUM
People In The Box Wall, Window
《悲しいね 悲しいね 悲しいね/ときどき 楽しいね》とこの世界を見定める“翻訳機”から、前作で手にした壮大なスケール感はそのままに、一気に視界の解像度が上がったようなタフな世界像が立ち上がる。草原や森林や砂漠ではなく、あの街角や路地裏や歩き慣れた道路の上を舞台に、残酷や孤独と愛しさや美しさが背中合わせになった日々が歌われていく。でもそこに暗さや悲壮感はない。なぜならそれこそが現実であり、生きている実感そのものだからだ。《手紙が降ってくるよ/はらり はらり 空から》(“手紙”)と自然からのメッセージを受け取り、疾走感のあるギターサウンドに載せて《ぼくはゆうれい/そばにいたいよ》とプリミティヴな欲求を叫び、《日々が消えるのは こわいから/誰もがまともなふりをしている》(“あの頃”)とギリギリの崖っぷちにある僕たちの生を暴く。今にも壊れそうだからこそ、何よりも大事な、愛おしい世界。そんな危ういリアルと、今作のPeople In The Boxは向かい合っている。同発のシングル『聖者たち』と併せ、これは強くなろうと決めた彼らの姿だ。(小川智宏)
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