昨年5月の五十嵐隆復活公演の時点で再結成のある種フラグは立っていたが、こうしてsyrup16g名義での新作を目の前にすると、改めて戦慄にも似た感慨が身体を走る。だが、解散前の前作アルバム『syrup16g』以来実に6年7ヶ月ぶりとなる新作『Hurt』で何より心震わされるのはその中身だ。歌メロ／ギター／ベースのユニゾンがミステリアスに心の琴線をまさぐる“Share the light”、ディスコ・ファンク調のビートからサイケデリアの世界を展開する“メビウスゲート”などメロディ／アレンジともに極限まで冴えまくった五十嵐の才気。それを「完全再現」のレベルを超えて鮮烈に表現する、ギター・ロックの粋を尽くした3人のアンサンブル。そして、《思考停止が唯一の希望》（“Stop brain”）と随所で毒を吐きつつ、それを「明日なき日々への自爆テロ」ではなく「自らを前へ先へと突き動かすロックンロール」として掲げる、五十嵐の鋭利で豊潤な歌。《愛してみろ　信じてみろ／壊してみろ　自分》（“理想的なスピードで”）……再び己と向き合うことに決めた彼の英断に、心からの拍手を贈りたくなる名盤。（高橋智樹）