【連載】奇跡の再始動STORY 〜syrup16g編〜

【連載】奇跡の再始動STORY 〜syrup16g編〜
【連載】奇跡の再始動STORY 〜syrup16g編〜
平成から令和へと元号が変わったタイミングからスタートした連載「奇跡の再始動STORY」。平成という時代に解散や活動休止し、そして再び平成で復活を果たしたバンドやグループ――彼らの歩みが止まってしまったあの日から、一体どんな未来=「今」に繋がっていたのかを辿ってきた。全5回でスタートしたが、好評につき新たに2回分を追加する。
その第6回目では、syrup16gを特集する。


■内省ギターロックの革命だった、その登場

奇跡の再始動を遂げたグループについて語ることができるのは、多くの場合、我々リスナーにとって喜ばしいことだ。ところが、その語るべき対象がsyrup16gというバンドになると、意味合いが大きく変わってくる。それは、このバンドが表現してきた音と言葉が、「活動すること=生きること」の意味として重く、また胸をヒリヒリとさせる緊張感をもってのしかかってくるからである。

《君に存在価値はあるか/そしてその根拠とは何だ/涙ながしてりゃ悲しいか/心なんて一生不安さ》(“生活”)

聴く者に額を擦り付けて生き難さごと相手の目を見据え、互いの喉元には諸刃の剣を押し当てるような切迫感に満ちたsyrup16gのギターロックは、かつてシーンに衝撃として迎えられた。

1996年、前身バンドで活動していた五十嵐隆(Vo・G)、佐藤元章(B)、中畑大樹(Dr)の3人によって、syrup16gは始まった。1999年にインディーズデビューのミニアルバム『Free Throw』をTiNSTAR RECORDSより発表。2001年には初のフルアルバム『COPY』をDAIZAWA RECORDSよりリリースする。21世紀の日本が世界的にも稀なギターロック隆盛の時代を迎えた理由のひとつに、ギターロックをプッシュし続けるインディーズレーベルの尽力があった。DAIZAWA RECORDSは、syrup16gの作品リリースや過去作のリイシューなど、今日に至るまでバンドと緊密な関係を築いている。

英米、そして国内の内省的で芸術性の高いギターロックのマナーを継承しつつ、痛ましく歪んだマインドと透き通った魂を重ね合わせるようにしながら五十嵐の詩情を後押ししてきたsyrup16gのサウンドは、陽気に浮かれるばかりではない日々を真摯に映し出す音楽として、独自のスタイルでギターロックの時代を過熱する力を備えていた。

■怒涛の楽曲制作、葛藤の日々、そして途絶えたリリース――

《時間は流れて/僕らは歳をとり/汚れて傷ついて/生まれ変わっていくのさ》(“Reborn”)

2作目のフルアルバム『coup d'Etat』(2002年)でメジャー進出を果たしてからも、syrup16gは猛烈なスピードで作品を世に送り出し続けた。しかし、その過程は決して順風満帆なものではなく、極限の精神的・技術的負荷をメンバーに強いることになる。佐藤が脱退し、新ベーシストとしてキタダマキ(B/当初はサポートメンバー)が参加。バンドに新しい風が吹き込まれることになるが、それは初の全国ツアーが行われるよりも前の話である。

地下室でラフなサウンドを生々しくレコーディングしたアルバム『HELL-SEE』(2003年)、そして『パープルムカデ』から始まる突然の連続シングルと、syrup16gは生き急ぐようなペースで作品を発表していたが、通算6作目のフルアルバム『delayedead』を最後に突然リリースが途切れる。ライブでは新曲が披露されるものの、音源制作には相当なストレスが付き纏っていたのではないか。2006年にベストアルバム『動脈』、『静脈』が発表されたときも、ファンにとっては不安を払拭させるまでに至らなかったはずだ。

■日本武道館での解散。ソロプロジェクトを経て長い沈黙へ

2007年末に「“END ROLL”」と題された東名阪ツアーを開催。その最終日に、翌年3月の日本武道館ワンマンをもって解散することが発表された。2008年初頭にセルフタイトルのアルバム『syrup16g』をリリースし、武道館ワンマン「“LIVE FOREVER” The last waltz of Syrup16g」でsyrup16gは遂にその歩みを止める。その後、中畑はVOLA & THE ORIENTAL MACHINEへの正式加入をはじめとする活動、キタダもさまざまなアーティストのサポートで活躍するようになり、五十嵐はソロプロジェクト=「犬が吠える」を始動させることになる。

ところが、メンバーを集め当初はツアー開催など順調に活動しているように見えた犬が吠えるも、リリースを行うことなく2009年4月に解散してしまう。五十嵐はその後、長い沈黙の時期に入ってしまった。

■待望の「生還」から奇跡の再始動。syrup16gは生きている



五十嵐が次なる公の活動を発表したのは、実に約4年後となる2013年3月のことだ。五十嵐隆のソロ名義によるライブ「生還」が5月に開催され、ステージ上の五十嵐の傍らには中畑とキタダの姿があった。辛うじて生きていること自体が物語になってしまう、それが五十嵐隆であり、syrup16gなのである。


そして2014年6月、syrup16gは再始動をアナウンスした。8月には6年半ぶりとなるオリジナルフルアルバム『Hurt』を発表。それからというものは、デビュー直後の時期を彷彿とさせるペースでライブやリリースを行い、2017年秋から2018年春にかけては『COPY』発売16周年を記念する16公演のツアー「十六夜<IZAYOI>」も繰り広げられた。

この2019年には、サブスク解禁、さらに10月からは全国5ヶ所でコンセプトの異なる2DAYSを計10公演行うツアー「syrup16g Tour 2019 【SCAM : SPAM】」を開催予定だ。しかし、バンドが活動すること、人が生きていられることは、決して当たり前のことではない。スリルと呼ぶには余りにも切実なその境地に、今もsyrup16gはいる。いつ終わってもおかしくなかった。そんなリアルな境地に立ってこそ、我々は生まれ変わるような体験を手にすることができるのかもしれない。(小池宏和)
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